本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION
【推定プレイ時間】
ボイスオンセで4~5時間
【前提】
舞台:1920年代
シナリオタイプ:シティシナリオ
ロスト:有
生還難易度:易
KP難易度:中 最終局面でのアドリブ進行要素強
基本ルルブ以外の要素:有
・マレウスモンスロトルム
・キーパーコンパニオン
その他:
・シナリオの一部にオリジナルの呪文、アーティファクトの解釈有
・探索者が回復困難な(運が悪ければ引退に至るような)後遺症を負う可能性有
・シナリオの一部に若干強めのグロテスク表現有
【推奨人数】
3~4人程度を想定
【推奨技能】
推奨:目星、図書館、対人技能、など
準推奨:聞き耳、歴史、投擲、鍵開け、医学、など
※準推奨は無くても全く問題ない技能です。
【HO、推奨職業】
1:探偵などの依頼を受けることの出来る人物
本シナリオでは依頼人から手紙を受け取る形の導入となるため、面識のない人物から依頼を受けることが出来る立場の人物であることが好ましい。またシナリオ制作時のコンセプトの関係上HO1は「過去に怪奇事件を解決した事があると噂されている」などの設定がある探索者を想定しているため、そういった設定のないPCをHO1におく場合は一部NPCのセリフなどに若干の改変の必要がある。新規継続は問わない。
2:上記の人物とともに行動がとれる人物
探偵助手や好奇心旺盛な人間など、依頼を受ける人物とともに行動が出来る人物を推奨する。これはひとつの依頼に対しPCが共に行動する都合をつけやすくするためといった意味合いが強いため、KP/PLがその点においてともに行動する理由をつけられるのであれば必ずしも面識のある人間の集まりでなくとも構わない。
【PL向けあらすじ】
探索者の元に届いた一通の手紙。それはとある町で行方不明となった城主を探してほしいという使用人からの依頼だった。古くから吸血鬼が住むという噂があるその町で行方不明事件を追うこととなった探索者たちは、その街で発生していた神話的事象と遭遇する。
【備考】
スタンダードなCoC+探偵モノというコンセプトで制作したシナリオのため、PCの人間関係もそれに準じた想定となっています。PC、PLに合わせた改変はお好みで行って頂いて構いません。
基本的に順路は一本道ですが、終盤にNPCの行動方針などを目安にKPがアドリブで進行することが必要となる部分があるため程度KPに慣れた方向けのシナリオです。
【概要】
探索者のもとに届いた一通の手紙。行方不明の人間を探してほしいとのその依頼によって探索者は指定された街へと向かい人探しをすることになる。
依頼人、行方不明者、事件の犯人、と徐々に迫りつつ、最終的には事件の解決へを向けて行動するスタンダードな初心者向けシティシナリオ。
【背景】
辺境の町の小さな古城に住まう男、ウィンストン・トレイラーは若いころから魔術に傾倒している魔術師だった。冒涜的な世界に魅入られ様々な知識や物品を収集していた彼は、研究のために必要とする時間に対して幼少期から病弱だった自分の身体に遺された時間の少なさに頭を悩ませていた。
ある日、そんなウィンストンのもとに一人の科学者が訪れる。科学者は冒涜的な技術の研究をしており、金銭と引き換えにウィンストンへ知識と技術、そしていくらかの資材をもたらす。それによってウィンストンは「原ショゴス変容タンク」「細胞質溶解剤」(ともにキーパーコンパニオンP102)と、新しい身体を作るという選択肢にたどり着く。
ウィンストンは原ショゴス質を作るには生きた人間の身体を用意するため、数少ない友人であった町の権力者のフィランダー・コルボーンに協力を求める。その狂人じみた理解しがたい求めに対しフィランダーは当然よい顔をしなかったが、町の治安の悪さや自らの手に負えない状況に頭を抱えていた彼は最終的には『生きた人間を差し出す事は出来ない』『引き取り手のない遺体に限る』『本当にそんなものが上手くいくなら町の事にも手を貸してくれ』と先の短い友人の頼みということもありウィンストンに妥協案と条件を提示する。
やがてウィンストンはその研究成果により遺体を元に製造した新たな身体の創造と、精神の転移に成功する。本来とは違う製法で作りだされた原ショゴス質は定期的な補強や作り直しを要したほか、能力自体も本来の原ショゴスに比べれば劣っていたが、ウィンストンにとってはひとまずは十分満足の行く結果であった。
その後、魔術を操り、町の助けとなり、そしていつからかその姿が老いることもなくなったウィンストンは町に住民たちからの信仰を集めることとなった。
年月は流れ、ウィンストンが老いとともにその異常な探求心を失い始めるころには、町の抱えていた問題もすっかり過去の事となっていた。
人生に満足したウィンストンが収集した物品を手放しながら自らその生に幕を引こうという考えに至る幾分か前、ウィンストンの世話係をしていたパトリス・コルボーンは奇妙な男に出会う。ウィンストンのことを良く知ったふうの男は、『ウィンストンに死期が近い』といった事をはじめとしさまざまな事を彼女に吹き込んでいった。『ウィンストンは町の英雄でありこの町の歴史とすべての民を背負った存在である』と幼い頃より教え込まれその老いぬ姿を目の当たりにしウィンストンを妄信していた彼女はその言葉に最初のうちこそ懐疑の念を向けたが、やがては男の口車に乗せられたかはたまた魔術の類か、その言葉の全てを信じ込むまでに至り最後に語られた未来に起きる【災厄】の話に強い恐怖を抱いた。
ウィンストンを信奉していたパトリスはウィンストンに町の危機とウィンストンの力の必要性をを伝えたが、それに対するウィンストンの反応は彼女の望んだものではなかった。彼女はウィンストンを【完全な存在】にすればその災厄を防げるに違いないと考え、狂気的な使命感により生きた人間をウィンストンの糧とすべく数名の女性と少女を誘拐し城の墓地地下にある牢に幽閉してしまう。
パトリスの不審な動きに気付いたウィンストンは彼女をとめようとしたが、彼女は彼の話に聞く耳を持たなかった。それどころか自分がこれだけ必死であるというのに城主は事の重大さを理解していないのだと激昂した彼女はウィンストンを無理やりにでも原ショゴスへと変えようとしてしまう。只ならぬ様子を察したウィンストンはパトリスとのもみ合いの末に非常時にと備えていた細胞質溶解剤を用いて自殺を試みる。しかし薬液を半身に浴び左半身を溶かした状態まで至ったところで薬瓶をパトリスに取り上げられた彼は、完全な死に至る事も出来ないまま彼女が取り乱した隙を突き城から逃亡することとなる。
状況を理解したウィンストンは古き友と交わした約束だけは破らぬよう、死ぬ前にパトリスの凶行の阻止と自らの研究成果の抹消のための策を講じる。なんとか人目を盗みつつ、ウィンストンは探偵である探索者へ向け一通の依頼の手紙を送った。
しかしパトリスはウィンストンの捜索中に彼がどこかへ手紙を送ったという事実を知り、その手紙のあて先を調べ探索者が目にするよりも早く焼き捨ててしまう。そして彼女はウィンストンの手紙の代わりに郵便受けに自らが綴った一通の「消印のない手紙」を投函する。行方不明になってしまった主をどうか探し出してほしい、と。
■ウィンストン・トレイラー 吸血鬼と呼ばれる城主
(元)STR:28 CON:24 POW:17 DEX:13 APP:16 SIZ:15 INT:18 EDU:14
(今)STR:6 CON:8 POW:12 DEX:5 APP:該当なし SIZ:8 INT:18 EDU:14
トールン城と呼ばれる小さな古城に住まう原ショゴスの身体を得た魔術師。外見は30代半ば程度。
町には昔からトレイラー家の人間は吸血鬼の血を引いているという噂があるが、実際のところは様々な要因からそのように噂されていただけのただの魔術師である。元々《コウモリ形態》(基本ルールブック257)の魔術が古くから伝わっていたために『この付近ではあまり見かけないコウモリが城の近くでのみよく見かけられる』という話が吸血鬼の噂を後押ししていた。
基本的に物腰穏やかで丁寧な人物だが、魔術師や冒涜的な研究に没頭する人間にありがちな自分本位な性格を併せ持つ。特別悪人と評するような行いこそなくとも善人といえるほどの人間性や倫理観を持ち合わせても居ない。
近年では研究意欲への衰えを強く感じており、自分の人生と役目に幕を引くことを考えていた。しかしパトリスによって命を落とすより先に完全なる原ショゴスへと変貌させられてしまう危機に陥った彼は、その名を噂に聞いたことのあった探索者へ向け助けを求める手紙を送る。
城からの逃亡の際に右半身を細胞質溶解剤によって破壊されており、現在彼の身体の半分近くはいびつに人の形を保とうとした不定形に近いものへと変貌している。そのような見た目であるために全身を覆うローブにフードを目深に被り、場所を変えつつ人目につかないように隠れている。
パトリスの語る災厄についてウィンストンは詳細を知らないが、研究のすべてを終わらせた後にどんな災厄が訪れようともはや自分のあずかり知るところではないと考えている。パトリスの暴走を止めようと考えたのは、かつての親友の恩義への最後の返礼に過ぎない。
また、彼は自分の死後自らの研究成果が他者に奪われる可能性を好ましく思わない。全ては自分の成果であり、技術であり、それを誰かにくれてやるなどというのは彼にとって耐え難いことだ。
街に訪れた探索者たちに接触を試みようとするが、『彼らに届いた手紙は自分が用意したものではない』という事実から生まれたわずかな違和感によりウィンストンは探索者との接触を取りやめその様子を伺うこととなる。
細胞質溶解剤の影響が大きく、彼の身体は既にそう長く生きながらえることは出来る状態にない。
■パトリス・コルボーン 魔術師の世話役をする娘
STR:10 CON:14 POW:6 DEX:11 APP:13 SIZ:12 INT:12 EDU:13
24歳。ごく普通の容姿、体格の物静かそうな女性。少し神経質な部分がある。
幼い頃に受けた教育によってウィンストンを強く信奉しており、ウィンストンを神に近い存在だと信じている。現在コルボーン家の血を引く人間は彼女1人であるため、トールン城の使用人もまた彼女1人きりである。
彼女は真の黒幕の言葉により今後クラウドホースに大きな災厄が起きると信じ込んでいる。伝え聞いた未来への恐怖から正気を失い、街を救うには今の力の弱ったウィンストンではなくもっと強力な力がなければならないとの強迫観念から旅行者や住人を攫いウィンストンを完全な原ショゴスにしようと行動する。
自分の行いが正義であると信じているため、基本的に【心理学】によって彼女の意図を単純に見抜くことは難しい。しかし自らの行いが正しいとは信じつつも、その行為はウィンストンにも拒絶されたとおり他者には受け入れられない行為だとも思っている。そのため、彼女は自分が城主や街の住人の失踪に関わっていることや儀式については秘匿しようとする。
導入の探索者たちとの会話以降彼女は自分でもウィンストンを探すといって姿を消し終盤の特定シーンに到達するまで探索者たちと再遭遇することはないが、彼女はその言葉通りウィンストンの捜索や探索者たちの監視などを行うだろう。
彼女はトールン城に住み込みで働いているが、実際に生活をしている《パトリスの部屋》以外に、街のはずれにはコルボーンの実家がある。何代も前から住み込みで従者をしている関係でほとんど廃墟に近く余り地元でも知られていない建物だが、彼女は現在儀式の準備や大事なものの保管などはそちらで内密に行っている。
パトリスは現在いくつかの魔術や薬品を所持しているが、それらの大半は後述の奇妙な男によって齎されたものである。
彼女の言う災厄とは大二次世界大戦のことであるが、彼女は「大きな災厄が起きる」という以上のことは知らない。それがどう足掻いて求められない出来事だということも。
■奇妙な男
かつてウィンストンに知識や技術を提供した科学者。彼は運悪くシャンに身体を乗っ取られ、悪意を持ってパトリスに接触し事件の火種を撒いた。事実上の真の黒幕であるが、本シナリオに直接的に登場することはない。パトリスと接触した後の行方は不明。
■誘拐された女性
パトリスによって拉致され、気がつくと墓地地下に隠された牢屋に閉じ込められていた数名の男女。原ショゴスの材料とするため感情抑制剤が用いられ一時的に意識が薄い。うーうー。
ウィンストンは彼らを救出したいと考えるが、ただすぐに逃がしただけでは再び捕らえられるか騒ぎになるかのどちらかである。そのためウィンストンは一旦彼らが変容タンクに連れて行かれる危険性の対抗策として地下牢の鍵を持ち去った。
彼らは「気付いたらここに居た」「城主が鍵を持っていった」という情報だけを把握している。それ以外核心に触れるような情報を持たず、自分たち自身についての記憶も曖昧となっている。また意識の低下により彼らから情報を引き出すのは少々手間がかかるだろう。
■街の住民
探索者が町の住人から情報収集をしたいと宣言した場合に登場する情報提供用NPCの例。
町の老人たちは基本的に地元の伝承や歴史に詳しい。ウィンストンには過去世話になったことも多々あったと言い、また今も昔と代わらずに美しいと語る。
若者はそもそもウィンストンの姿を見たこと自体あまりなく、吸血鬼のうわさについて話は知っていてもあくまでも伝説、伝承、程度に考えているものが多い。若いころにウィンストンと関わったことのある老人はその伝承を真実と考えている者も少なくはない。慕ってはいるが狂信的なものではないので、り若者やよその人間にウィンストンが吸血鬼であるという話についての真偽の捉え方はあまり気にしていない。
→《町の住民に知れている吸血鬼の伝承》
ありふれた吸血鬼のうわさが出回っているが、人間に危害を加えるような話はない。
「人間よりも高い身体能力を持っている」「魔法を使うことができる」「蝙蝠に変化する」「昔から町の周辺で時折失血死した動物が発見されることがある」(※1)といったものが主で、「陽の下を歩くことや十字架などを苦手としない」という話もある。それでもあまり陽の下を歩くことはなかったというが、夜間の出歩きに関しては単純にウィンストンがここ数十年ほど不老不死や吸血鬼という話題で自分と接触したがる外部の人間と顔を合わせることを嫌い人前にあまり顔を出さないようにしていたというだけである。
(※1)
・身体能力:原ショゴスとなっているため人間より身体能力が高い。ウィンストン以前の人間にはそういった傾向はなかった。
・魔法を使う:トレイラー家は古くから魔術を扱うことがあった。強大な力を持つような魔術は持たなかったが、ウィンストンは個人的な探求により家に伝わっていたものよりも多くの魔術を所持している。
・蝙蝠に変化する:トレイラー家には蝙蝠に変身する魔術が伝わっていた。ウィンストンもこれを使用することができる。(コウモリ形態/基本ルルブP257)
・失血死した動物:時折動物の血液が魔術に用いられていた。
■行方不明の少女とその弟
行方不明の姉 ウェンディ・ブルースター(17歳)
その弟 リック・ブルースター(10歳)
数年前に両親を事故で失う。
それ以降姉のウェンディが家業の雑貨屋を継ぎ、周囲の人々に支えられながら弟の世話をしていた。店じまいをする夕刻にいつもその時刻まで公園で遊んでいるリックを迎えに行くのが日課だったが、弟を迎えに行く途中でパトリスに誘拐されてしまった。
弟は子供らしい性格で、普段は明るいが姉が行方不明になって以降元気がない。姉が行方不明になって以降教会で一時的に保護されている。
■教会の人々
教会にいるごく普通の神父やシスター。おそらく普通にキリスト教に属しているため、古くから根付いている吸血鬼信仰には立場的には少し否定的な部分もある。彼らは街の外から来た人間が多く、一応ウィンストン自身については信頼してはいるが、彼について深いことは知らない。
一般的な吸血鬼伝承に詳しく、この町では吸血鬼という存在の扱いがそれらと違っている事もある程度は把握している。
※地元の人間は全員最近の行方不明事件について知っている。
【基本的なシナリオの流れ】
シティシナリオであるという性質上探索者は自由に町を探索することは出来るが、本シナリオではスムーズな進行のため「特に行く理由はないが地図にあるのでとりあえず行ってみる」などの行動が起きにくいようにPL向けの地図は用意していない。
青字の表記はPLが望めば探索できるが探索が必須ではない場所。
手紙の受け取り
事前情報収集
街へ
↓
依頼人の話を聞く
トールン城内部探索
↓
宿屋
酒場
行方不明少女宅
雑貨屋
教会
↓
公園
郵便局
↓
パトリスの実家
古い墓地
↓
城敷地内墓地
墓地地下
↓
城主の部屋
トールン城地下
パトリスとの戦闘
↓
エンディング
夜、探索者が外出からの帰宅など何かしらのタイミングでポストを確認すると郵便受けに一通の手紙が届いていることに気付く。そこには、行方不明になった城の主を探して欲しいという内容の依頼文が書かれていた。
【依頼人の手紙】
はじめまして(探索者名)様。
わたくしはパトリス・コルボーンと申します。最近、あなた様の噂をお聞きし、どうかお力をお借りしたくこの手紙をしたためさせて頂いております。
先日わたくしのお仕えする城主様が突然行方知れずになってしまい、手は尽くしましたが城主様を見つけ出すことは出来ず貴方様に捜索の依頼をお願いしたく思うのです。城主様に何かあったらと考えると不安でなりません。もし依頼を受けてくださるようでしたら、クラウドホースにあるトールン城までお越し頂けませんでしょうか。詳しいお話はそちらでと思います。
少ないですが前金を添えさせていただきますので、どうかよろしくお願いいたします。
パトリス・コルボーン
手紙の内容の通り、質素な茶封筒の中には封筒には便箋とともにいくらかの現金が添えられている。
【知識】に成功、もしくは地図を見るなどで具体的に調べると、探索者の家からは少々遠方になる場所にクラウドホースという街があることがわかる。同時に探索者は添えられた現金がちょうど馬車代に少し余る程度の額であるということもわかるだろう。
●手紙を読んだ、もしくはポストから手紙を取り出し家に入る、といったタイミングでその場に居る探索者たちに強制で【目星】もしくは【聞き耳】を行わせる。
→【目星】に成功
家の脇の一角に見慣れない明かりがあることに気付く。探索者はやがてゆらゆらと揺らめくそれが何か燃えている小さな炎だと気付いた。
→【聞き耳】に成功
なにか近くから焦げ臭い香りが漂ってくることに気付く。においの元を探すのであれば、家の裏手付近の路地から焚き火のようなほんの小さな明かりと煙が上がっていることに気付く。
※共通の情報
決して大きな火ではない。精々ちょっとした焚き火程度の小さな火だ。
しかし基本的にこんな場所で焚き火をする理由もそんなことをする人間がいることも思い当たらないだろう。明らかな不審火だ)
→失敗
特に何も気付かない。
翌日に下記『不審火を確認しなかった、または前日に技能に失敗した』の項目へ。
●不審火を確認しに行く
調べに行くのであれば、そこで小さないくつかの枯れ枝とともに何か紙切れのようなものが燃えていることに気付く。それが何かを確かめるには当然まず消火をする必要がある。消火の方法は迅速に火を消せる方法であれば何でも構わない。
火を消した後に【焼け焦げた手紙】を入手する。ただし、水をかけた場合は焼け焦げに加えて文字が滲んでしまうため目星聞き耳を失敗した場合に翌日手に入る【燃えつきかけた手紙】と同じ文章を提示すること。どちらも文章のほとんどは焼けており、かろうじていくつかの文字が読み取れるだけだ。
【焼け焦げた手紙】
消印のついた切手のようなものが見える。
「(代表探索者名最後の1~2文字くらい)様」「スにあるトール」「を葬る」「死人が出」
【燃えつきかけた手紙】
「(探索者の名前の一部)」「ール」「を葬」「は死」
●不審火を確認しなかった、または前日に技能に失敗した
【目星】【聞き耳】に失敗した場合、明かりを調べなかった場合は、翌日KPが妥当であると思うタイミングで昨晩近所で不審火があったらしいという話を耳にする。何に火がついていたのかの詳細情報を得ることは出来ないが、現場を見れば建物の影に何かが燃えたような、焚き火でもしたような黒い燃えカスがあることに気付く。
調べるのであれば【目星】からさらに【言語】もしくは【アイデア】ロールに成功することで【燃えつきかけた手紙】の情報を開示してもよい
○手紙の筆跡
PLから質問があった場合、手紙の筆跡について調べることが出来る。【母国語ロールの半分】かKPが妥当だと思われるその他技能に成功することでそれぞれ
・【依頼人からの手紙】(パトリスが書いたもの)
小奇麗な整った文字。
・【焼け焦げた手紙】(ウィンストンが書いたもの)
丁寧に整った、少し古めかしい書体 ところどころ文字に強い乱れが見られる。
ということがわかる。
【知識】【オカルト】その他、KPが妥当と思える技能に成功することで以下の情報を与える。
また、PLからの提案があればPCの知り合いや土地の情報を知っていて妥当と思われる人物などに話を聞くことで同様に以下の情報を得てもよい。
●クラウドホースについて
《【知識】に成功した場合》
探索者の住む街から馬車で半日程度の遠方にある町。
小さな城を中心に建物がぽつぽつと連なる小さな田舎町であり、吸血鬼の住まう街という噂話がある。
・探索者が【歴史】を持っている場合は追加情報として、昔は治安が悪い土地であったが今ではすっかり落ち着いているようだということを知っていてよい。
※情報入手に必要なロールの有無は卓の好みにあわせて構いません。
《【オカルト】に成功した場合》
あなたはクラウドホースという街の城には吸血鬼が住まうという噂を聞いたことがある。
また、その街ではその存在に対して人々は好意的であるといい、そのため他の土地の人間からは奇妙に思われているようだ。
●トールン城について
《【知識】に成功した場合》
クラウドホースという辺境の町にそんな名前の城があると聞いたことがある。
《【オカルト】に成功した場合》
何百年も年老いることなく生き続ける吸血鬼がいるという小さな古城の噂を聞いたことがある。噂の大半は何の変哲もないありふれた吸血鬼のそれだが、人間に対してとても友好的であり時折人間に救いの手を差し伸べることもあったという話がある。
○移動手段について
シナリオ的には移動は馬車を想定しているが、PCに他に移動手段があるのであれば必ずしも馬車でなくて構わない。
■クラウドホースヘ
地元を出て馬車に揺られ、周囲に見える建物の姿も徐々にまばらになってから数時間。すっかり人里を離れてからしばらくした頃、日の傾きも近くなってきたのではないかという頃合にようやく遠くに小さな建物が連なる街並みが目に入る。開けた平原の先、山や森に囲まれた街の奥には古びた城が見える。おそらくあれがトールン城だろうということを推察するのは難しいことではない。
街の前で馬車を降りると、田畑に囲まれた古い町並みが探索者たちを出迎える。小さい町に似つかわしい小さな古城が森を背にし、そこから扇状に民家や小さな商店が立ち並んでいる。町を抜けてトールン城と思われる建物に向かうのは容易だろう。
●城の外観
城内に踏み入る前後を問わず城前で建物に対し【目星】を振ることが出来る。
《【目星】に成功した場合》
二階にある部屋の窓ガラスに虫が止まっていることに気付く。
・さらに成功者には改めて【アイデア】を振らせ、成功した探索者は「その窓ガラスは一部分が割れており、よく見れば一匹の蛾がその割れたガラスの合間の何もないはずの空間に、ガラスに張り付くのと同じ姿勢で留まっている」ことに気付く。しかしそれは一瞬の出来事で、まもなく蛾はどこかへ飛び立ってしまう。
●城の扉
外周を囲むように植えられた真っ赤なバラの生垣は、その古城の小さくも美しい姿を際立たせた。古めかしい城門を通り、手入れされた草木の茂る広い敷地に敷かれた石畳を進めば城の扉の前にたどり着く。建物にはどの部屋もカーテンが引かれており内部の様子を伺うことは出来ない。扉の前にはシンプルな形状の金属製のドアノッカーが備えられており、これで内部に来訪を伝えることが出来そうだ。
(城の裏手の目立たぬ場所に墓地があるが、パトリスとの会話をするよりも先にそちらを探索してしまった場合NPCのRPなど進行が複雑になってしまう可能性が高い。可能であれば最短でもパトリスの話を聞いた後の自由行動に入って以降のタイミングに訪れるのが好ましい。墓地の詳細についてはページ後方に記載の【城敷地内:墓地】の項目にて)
探索者がドアをノックする、中に呼びかける、等の行動をとれはメイドのパトリスが扉を開けるだろう。パトリスは見慣れない姿の探索者たちに一瞬驚いた様子を見せるが、名乗る、もしくは彼女の反応を待つなどすればすぐに探索者たちを自分の依頼を受けてくれた人物であると察する。
彼女は心底安心したような様子を見せ、探索者たちにどうぞ中へと招き入れる。
○城内の描写
城内は落ち着いた雰囲気であり、城とはいっても豪華な装飾等が施されているわけでもない。精々いくらかのちいさな彫刻や絵画がひっそりと飾られている程度にとどまっている。開かれた玄関の扉や窓にかかったカーテン越しに差し込む光に照らされた薄暗いエントランスからは赤褐色の絨毯の敷かれた廊下が城の奥へと続いており、また二階へ上がることの出来る階段もあるようだ。
場内に足を踏み入れてから応接間へ向かうまでの間、内部の様子に【目星】を振ることが出来る。
《【目星】に成功した場合》
廊下は古くところどころ埃っぽいが、手入れがされていないというよりは、隅々まで掃除が行き届いていない、といったような印象を受ける。そんな廊下の壁に、他の絵画とは雰囲気の違う肖像画のような絵が飾ってあることに気付く。そこそこ整った容姿の男性の絵だ。年齢は30代半ばほどだろうか。その隣には壮年の男女が並んだ肖像画も飾られている。
その人物についてパトリスに尋ねればそれがそれぞれ城主であるウィンストンと、その両親の肖像画であるとの返答があるだろう。
返答例:そちらはウィンストン様と、先代様とその奥様になります。私は先代様についてはあまりお聞きしたことがないのですが、きっとウィンストン様と同じように素晴らしい方でいらっしゃったと思います。
また、探索者は絵画に対し【アイデア】または【絵画】を振ることが出来る。
《【目星】からの【アイデア】に成功した場合》
その肖像画はずいぶんと古い物のように感じられる。描かれた人物が存命であるなら相当な高齢なのではないかと想像出来た。(それについてパトリス尋ねるのであれば彼女はそれを肯定するし、正直自分も具体的な年齢は存じ上げない、と返答する。話の流れ次第では現在の容姿もそれとほとんど変わっていないということがこの時点でわかるだろう)
《【目星】からの【絵画】に成功した場合》
無名の画家の絵だろうか。その絵は現在の城主であると伝えられたウィンストンの肖像画だけをみても100年は前のものに見える。それだけ古い絵画に描かれたその年頃の人物が果たして今も生きているものなのか?と疑問が浮かぶだろう。
(両親の絵もウィンストンの絵も描かれた年代はあまり変わらないようだ。また、絵の特徴から見てそれぞれ同じ画家の若年期と晩年期の作品のようにも感じられる)
《【目星】に失敗した場合》
城内は薄暗く少々埃っぽい印象を受ける。汚れている、散らかっている、というほどのものではないが掃除が行き届いてないのだろうか。
パトリスは廊下を進んでいった先、応接間の扉を開くと「こちらへどうぞ」と軽く頭を下げる。
室内には古めかしい木製のローテーブルを挟み横長のソファが二つ設置されており、窓からは白のレースのカーテン越しに傾きつつある日差しが室内に差し込んでいる。
彼女は探索者達にソファに腰掛けるように勧めた後、自らの名(パトリス・コルボーン)を名乗り軽い挨拶ののちに依頼内容についてを詳しく説明することとなるが、彼女は話を始める前に探索者たちに一言かけてから一度お茶の用意に部屋を出て行く。
しばしの間を置いた後、パトリスは「お待たせいたしました」と探索者の人数分のティーカップを並べると、それぞれに紅茶を注ぎつつ不安げに表情を翳らせつつ依頼について話し始める。
■依頼:城主の失踪について
○パトリスからの依頼
「ご足労頂まして本当にありがとうございます。(探索者)様方に来ていただけで、本当に嬉しく思います。お手紙でも申し上げました依頼についてなのですが、一週間ほど前から突然城主様の行方がわからなくなってしまったのです。
わたくし、代々ウィンストン様に仕える家の生まれであるのですがこのようなことは今までにありませんでしたので、どうしたらいいのかわからなくなってしまって……。自分でもあちこち探したのですが手がかりをつかむことも出来なかったなか貴方様方の噂をお聞きし手紙を送らせて頂いたのです……」
■想定される質問と回答例
●城主、ウィンストンについて
「その、街の外の方は突然このようなことを言われてもお困りになるかとは思うのですが、ウィンストン様は……その、この町に昔から住まわれている吸血鬼であるとお聞きしています。ですので普通の探偵の方や警察の方にはお話をすることも難しいものですから……」
「最近少し体調が優れない様子がありましたので心配していたのですが、それについては大丈夫だと仰るばかりでお答えいただけなくて……」
●ウィンストンの行方の心当たりについて
「それが特に行き先に思い当たる場所もないのです…。私の出来る範囲で城内や街も探して回ったのですが……。手がかりを探そうにも城主様の部屋には鍵がかかった状態で中を覗くことすら間々ならないのです……」
■自由探索開始へ
話が一区切りしたところで彼女は「必要があれば城内についてはご自由に調べてくださって構いません。片づけを済ませましたら私の方でもウィンストン様を探しにまいります。皆様どうか、よろしくお願いいたします」と深く頭を下げてから席を立つ。
PCから同行の提案があった場合、彼女は出来るだけ速やかにウィンストン様を見つけたいため手分けをしたい、何かあれば連絡をする、とそれを断る。
パトリスは部屋を出る際思い出したように探索者たちを呼び止め「失礼しました、大切なことを忘れておりました。今晩の宿の手配はお済みでしょうか」と確認した後に、探索者に宿の場所を伝え「宿泊代等の手配は済ませておきますのでそちらへどうぞ」と頭を下げ改めて立ち去る。
●探索可能場所について
城内にはいくつもの部屋やバスルームなどがあるが、すべてを探索する必要はない。この時点で探索可能で情報のある箇所は【城主ウィンストンの部屋】【パトリスの部屋】【書斎】の三つのみだが、PLの提案、宣言とPKの判断によってはあって妥当であると思われるものは追加してよい。
【パトリスの部屋】以外に客室や応接間、バスルーム、キッチンや物置など住居として妥当なものがあるが、それらの部屋には特別情報はない。必要があればKPの裁量で情報や物品を配置しても構わない。
鍵はかかっていないので許可を得ずとも入室することは可能だが、パトリスに探索の許可を得ようとすると、彼女は「関係のあるものはないとは思いますが…」とは言いつつ部屋に入ること自体は拒みはしない。簡単な交渉で中を調べることが可能。主に使用できる技能は【目星】【図書館】。
<室内描写>
室内は明るい色をした木製の家具類と白いシーツの敷かれたベッドが置かれており、清潔感を感じる。落ち着いた女性の部屋、といったふうだ。特に目に付くものとしては本棚、机、クローゼットがある。日用品のそろい具合からおそらく彼女はここで生活しているのだろうということが伺える。
○部屋全体に【目星】
清潔感のある整った部屋だが、本棚の書籍の並びやハンガーにかかった衣服の並びなどに少し乱れを感じる。窓枠などの部屋の隅には若干の埃が積もっている。
○机に【目星】
→成功
ペンやノート、鏡や生活雑貨などが置かれている。引き出しには古ぼけて何が書いてあるかもわからないような古い手紙(ごく普通の、歴代の城の使用人たちと外部の人間とのやりとりの手紙)がいくつも収納されているようだ。
【アイデアの半分】や、もし【古物鑑定】などの技能を持っているのであれば内容をほんの少し読み取ることが出来る。手紙には街から出て行った人や知人などとの日常のやり取りが綴られており、内容からは代々使用人たちがウィンストンに示していた敬意の様子が伺えた。ぽつぽつと局所的に拾い読みが出来はするが、詳細を読み取ることは困難であり、差出人の名前などもインクが風化しており確認できない。
○クローゼットに【目星】
→成功
清楚な雰囲気の衣服が並んでいる。黒いスカートや上着、白いエプロンなどに混じってわずかばかり落ち着いた暖色の私服のようなものも見受けられる。しばらく着ていないであろう服はきれいに収納されているが、手の届き易い位置にある服はハンガーへのかかり方もたたみ方も少々雑になっているように見えた。衣類のほかに特別目立つ品は収納されていない。
○本棚に【図書館】
→成功
小さな本棚に古いもの最近ものと思われる書籍が並んでいる。ごく普通の小説や辞典などが並ぶ中、その一角には古い日記のようなものもまとめてあるようだ。中を読むのであれば、あまり古いものになると解読が難しいがパトリス以前の歴代の使用人が綴ったと思われる文章が綴られている。日常について他愛のない記録やメモなどが書きとめられており、その中にはパトリスのものもある。毎日日記をつけているわけではないようで日付は疎らだが、最後の記録は10日ほど前のメモ書きだ。石鹸や電球、ペンのインクなどの日用雑貨の補充について書き留められている。
2Fのめぼしい部屋として《城主の部屋》《書斎》がある。《物置》もあるにはあるが、特別な品はないごく一般的な物置のため描写は割愛する。探索者が何か必要とした場合にそこにあって妥当なものを目星や幸運等で探し出せることにしてよい。
※現時点では鍵+魔術の防壁によって中に入ることが出来ない
<扉描写>
重厚な木製の古びた扉はこの古びた城にふさわしい様子だ。探索者がその扉に手をかければ、その扉にはしっかりした鍵がかかっている事がわかるだろう。同時にそのように部屋に入ることを試みようとする、扉を調べようとするなどの試みをしたときに【PL全員1D100】を行う。
出目が50以下だった探索者(全員50を越えたいた場合は最も出目の低かった一人。同数がいた場合はそのそれぞれに)に以下の情報を与える。
<一瞬視えたもの>
あなたは一瞬、ほんの一瞬その扉が青白く奇妙な文様を発光させたように見えた。しかしそれはその一瞬以降、同様の光景を再現することはなく、何かが起こることもない。その光の前後で扉や周囲に何らかの変化が起こった、という様子もなかった。
<描写>
木製の重いドアの先廊下と同様の赤褐色のカーペットの上に立派な本棚が並んでいる。カーテンのかかった窓際には小さなソファとシンプルな小型の木製デスクが置かれている。
使用できる主な技能は【目星】【図書館】など。
本棚には一見しただけでも様々なジャンルの本が並んでいるが分かる。大半が古びているものだが、最近の書籍もちらほらと目に付くだろう。また、デスクには小さい引き出しがついている。
○デスクの引き出し(技能不要)
中には特にこれといってめぼしい情報があるでもないメモ帳の類と筆記用具に封筒がひとつ入っている。封筒の中にはそこそこ多額の現金が入っている。(ウィンストンが手紙に書いていた報酬。探索者たちがそれを知る術はないが、これを懐に収めても合法である。これは図書館で見つけた本の隙間から出てもよい)
○本棚に【図書館】
→成功
●クラウドホースについて書かれた古い本(刷られた時期は不明)
元々治安の悪かった町であったのがある時期から行われた治安改善活動によって緩やかに治安が安定するようになっていった話が書かれている。具体的には、当時の町の有力者たちで事件への取り締まりや対策に力を入れそれが実を結んだといった流れのようだ。
地元の伝承などについても触れられており、トールン城の城主の家系であるトレイラー家には代々吸血鬼の血を引くという伝説が残っているとも書かれている。吸血鬼絵伝承の大半はごく一般的な吸血鬼の話が綴られているがトレイラーの人間は争いや暴力を好まなかったといい、時折人ならざる力にて人々に救いを齎すこともあったという。
●小説
古いオカルト小説。どうやらクラウドホースを舞台にしているようで、地名や人名にクラウドホースやトールン城、トレイラー家の名をもじったような名前がぽつぽつと出てくる。
城に住まう吸血鬼が恋仲になった女性のためにその身を捧げ、悪魔を前に危機に瀕した女性と街を前に自ら太陽の下で戦いを繰り広げ最終的に命と引き換えに救う、といった大衆向けのラブストーリーのようだ。
○部屋に【目星】
部屋に入った、もしくは出る前など、区切りのいいところで探索者たちに強制目星を振らせる。探索者から自発的に目星を振りたいとの発言があればそのタイミングにて。
→成功
部屋の隅にガラスの破片のようなものと、床のカーペットに染みのようなものがある。何かをこぼしたようなシミが二種類ある。もともとのカーペットの色が赤黒いため、それがそれぞれ元々何色をしていたどんな液体なのかは分からない。
破片に対しては【アイデア】、カーペットの染みには【医学】【薬学】を試みることが出来る。
→《【アイデア】に成功》
成功すればその破片が何かビンのような物が割れた破片のようにみえると感じる。また、ガラスにはラベルのようなものが張り付いており、「lar s」という文字がかろうじて読み取ることが出来る。
→《【医学】に成功》
片方の染みが血液ではないかと推測できる。
→《【薬学】に成功》
片方の染みが何らかの薬品だということがわかるが、具体的に何であるのかを理解することは出来ない。
★町の探索順路について
基本的には出向いた先から探索候補となる場所や人物名が出てくるように作成しているため、基本的には町での探索について探索箇所を一覧として提示する必要はない。会話で出した探索場所が探索場所として認識されない場合の多くは探索しなくても構わない場所だろう。
探索者が行き先に迷うことがあれば必要に応じてその時点で探索場所としてふさわしい場所に向かう理由が出来るように誘導をかけると良い。また一部NPCは複数の地点で遭遇が可能なため、遭遇し損ねた場合はタイミングを見て都合のいい場所で遭遇させるといいだろう。
●若い夫婦の営む宿屋
小奇麗な宿屋。白いレンガの建物に暗褐色の屋根が乗っている。陽の沈みつつある中で建物内から漏れる明かりの温かみが目立つ。宿屋の隣の建物の明かりは酒場か何かのようだ。(※隣に情報収集場所がありますというさりげないアピールですが酒場は必須探索箇所ではないため気付かれなくても構いません)
中にはいると若い男性がいらっしゃいませ、と探索者たちを出迎える。
彼は「(探索者名)さま方でしょうか。コルボーン氏からお話は伺っております」と頭を下げてから部屋の準備が出来ていることを伝え部屋へ案内してくれる。
「お泊りになられることの出来る部屋は4屋ほどございますが、他にお客様もいらっしゃいませんのでどうぞお好きな部屋をお選びください。お食事は一階の広間に用意いたしますので、それまでどうぞお部屋でお休みください」
2階まで先導したところで彼は「このたびはコルボーン様の依頼をお受けくださり本当にありがとうございます。たて続いた事件に城主様まで居なくなられたと聞いて私も大変不安に思っていましたので……」と城主の行方不明以外にも事件が発生していることを語る。
それについて尋ねれば、彼はここ2週間ほど近所で行方不明事件が数件発生していることを話す。
・夫婦から得られる情報
城主様がどこに消えてしまったのかは知らない。自分たちは最後にどこで見かけたという話も聞かない。
2週間ほど前から何件か行方不明事件があるので、何かの事件に巻き込まれたのではないかととても心配している。消えたのは旅行客数名と地元の人間が二人。旅行客→地元の人間一人、城主、の順にいなくなっている。(※最初の事件は二週間前、最後のウィンストンの失踪が一週間前となる)
旅行客については警察も捜査はしているようだが捜査はずさんで全く情報はないという。地元の人間については、近所に住んでいる16歳の少女、ウェンディ・ブルースターが一週間ほど前に姿を消したとの話を語る。
詳しく尋ねるのであれば、旅行客やウィンストンについては夫婦は詳細を知らないが、地元の行方不明少女の家の住所を聞くことが可能。少女は両親を事故で亡くしてから両親が経営していた雑貨屋を引継ぎ仕事をしながら10歳の弟リックと暮らしていたといい、弟は以前は公園で遊んでいる姿をよく見かけたが事件以降すっかり外に姿を見せなくなったらしい。
宿につく頃にはすっかり日も落ちており、宿屋の夫婦は探索者たちがこの時間に外を出歩こうとするのを見るとこの時間に出歩くのは危険かもしれないし夜が明けてからにしては如何ですかと探索者たちを心配する。
(現時点で探索して情報を得ることが出来るのは酒場のみ)
★就寝前のイベント
夜寝る前に全員に【聞き耳】を振らせる。
→《成功》した場合の描写
ずるずると地面の上で何かを引きずるような音が微かにあなたの耳に届く。さらに何か粘着質な物体が蠢いているような、ぐっしょりと塗れた絨毯の上を何かが歩みを進めるような不快な音がそれに重なる。決していい予感をさせないそれに、あなたはぞわりと背筋が冷えるような感覚に襲われる。
聞き耳に成功すればそのまま以下にある窓の外の描写。
もし全員が失敗した場合は再度全員に改めて【目星】を降らせてもいい。
→《窓の外》【聞き耳】または【目星】に成功
すっかり日の落ちた暗闇の景色が窓の外に在る。あなたはその暗闇の中、宿の建物の壁に程近い草陰に何かがいることに気付く。それは、暗がりから宿屋の明かりに照らされる肉色をした何かだ。ほんの一瞬目に入ったそれは、何本もの曲がりくねった人の腕を生やした肉塊のようにも見えた。
あなたがそれに気付いた瞬間、それはまるで身を隠すかのように闇夜の暗がり姿を消した。街頭もまばらな暗い町の中、それが一体どこへ行ったのか、あなたには見当をつけることも出来ない。
続けて【アイデア】を振らせ、成功者は「あれは自分たちを見ていたのでは?」と感じる。
【SANチェック】
アイデア成功者は 成功1、失敗で1D4
アイデア失敗者は 成功0、失敗で1D3
暗いうちはわからないが、何かが居た場所にライトなどの明かりを持っていった場合や翌日改めて調べに行った場合、そこの地面に赤黒いシミのようなものがあることに気付く。【医学】を試みる場合、成功でそれが何らかの血液だということを理解してよいだろう。
血痕は途中で途切れており、行方を追うことは出来ない。
※一日目の夜に探索することが可能なのは酒場のみで、それ以外は翌日日中の探索を想定している。
地元民向けの簡素な飲食店だだ。夜は酒場、昼は食堂をやっているらしいその店内はカウンター席に木製の丸テーブルとそれを囲むように並べられた椅子が並ぶ。事件の影響か人の姿は少ない。
静かな店内にはカウンター席に酔った男が一人と女店主、そしてその手伝いをしているらしき若い男性が一人の計3人の姿が見える。
女店主は気さくな様子で、話しかければ町の住人が知っている情報であれば大抵は答えてくれることだろう。酔った男は話しかけてもあまりまともな反応がないが、店内でウィンストンの行方不明事件の件についてを話題に出した場合、《数日前にウィンストンを見た》と話に割って入る。
日ごろから飲んだくれている男の話を誰も信用していないらしく、女店主は「またその話?どうせ酔っていだんでしょう。そもそもそれが本当に城主様ならこんなに心配をかけるような行方知れずになんてなるわけないわよ」と男をあしらってしまう。男はいーや見たね、と主張を続けるが、酔った男から話を聞く場合見た目どおりの酔いっぷりからめちゃくちゃな話を交えつつ話をするため、KPの判断によっては適切だと思える技能によって上手く情報を整理した状態で聞きだせることにしてもよい。ちなみに時間を改めても酔った男は酔った男のままなので聞きだせる情報は変わらない。
酔った男のRPはあくまでも一例としての記載であるため、どの程度の酔っ払いRPをするかはKPの加減に委ねる。表現を誤るとPC/PLがあらぬ推理を立てはじめてしまう可能性があるため致命的なミスリードを起こすことのないようにだけ注意すること。
■男に話を聞く
→《情報の要点》
・酔い覚ましのために公園のベンチで夜風に当たっていたとき、すぐそばの道を歩いているのを見かけた。
・ウィンストンは黒いフードを被った姿をしていて一瞬誰だかわからなかったが、一瞬郵便局前の街頭に照らされた横顔がはっきりと見えた。そう何度も見たことはないがあれは確かにウィンストンだった。
・すこしふらついた様子だったので酔っていたのかもしれない。
・声をかけようかと思ったが、一瞬目を離したすきに姿を消してしまった。きっと蝙蝠になって飛んでっちまったに違いない。
→《酔った男の話》
あのあれだよ、何日前だったかなァ~~?何日か前だったと思うんだけどよぉ、夜公園で寝てたらあの草むらになんかあれ犬 犬が居たんだよ犬 犬が居たんだけどなんか黒いフードの男が歩いてたわけ。犬が。わかる?そんで黒いフードの中が街頭の下でしょ、明かりで見えたとき、あの横顔は間違いなく城主さまだったね。間違いねえよ俺あんまり城主さまの顔見たことねえけどこの町であんな上品な顔してんの城主さまくらいだからね。あとはなんかしおれたジジイとババアばっかだからよ。ふらっふらしてっからしらねー酔っ払いかと思ったねあのババアは。ババア?お前なんだ急にババアがどうしたって?いやばああじゃねえな犬か?蝙蝠だよなあ?なんかあれだよ最近居なくなっちまったっつーからいや普通に居るじゃねえかとおもって声かけようとしたら居なくなっちまっててよぉ。あれはどっか飛んでったんだろうなあ。なんたって吸血鬼サマだもんなァ……。
●行方不明の少女の家
住宅街の中にあるごく普通の小さな一軒家。すぐとなりに雑貨屋らしきものがあるが、クローズドの板がぶら下がっている。玄関のドアをノックしても呼びかけても完全に無反応で、しんと静まり返った室内から人の気配はしない。
そのまま隣の雑貨屋の中を調べた後か、探索者たちがどうするか悩むorそのままそこを立ち去ろうとしたタイミングで家の前を通りかかった女性(近所に住んでいる)が「ブルースターさんにご用事ですか?」と声をかけてくる。
会話をすれば姉の行方不明と弟のリックが一時的に近所にある教会に保護されたという話を聞きだすことが出来るだろう。彼女から得られる兄弟の情報は宿屋で得られるものと同様(両親を事故で亡くし二人で暮らしていた。弟は以前は公園で遊んでいる姿をよく見かけたが事件以降すっかり外に姿を見せなくなった。姉は両親から継いだ雑貨屋を営んでいたが、行方不明以降店は閉じられたままとなっている)であり、特別目新しい情報は知らない。
●少女の雑貨屋
クローズドの札はかかっている。
【鍵開け】に成功するか弟を説得して鍵を借りるなどすることによって探索することが可能だが、必須探索箇所ではないため中を見ずとも構わない。探索者が積極的に内部を調べたがるなどした場合にのみ鍵開けを試みることが出来る旨を伝えるといいだろう。内部にて使用できる主な技能は【目星】【経理】など。
外から窓ガラス越しに見てもわかるが、こぢんまりとした店内はそう品揃えがよさそうにも見えないが頻繁に使用するような生活雑貨をそろえるには十分なようにも見える。
《店内への【目星】に成功した場合》
外観どおりそう品揃えがいいようには見えない小さな雑貨屋だ。日用品が並ぶ中、カウンターの奥に紙束のようなものが見える。どうやら商品管理用に使っていたもののようだ。最近仕入れた商品や売れたも品物の個数などがきれいな文字で書き込まれている。
最近の書き込みを拾い読めば
ティッシュ、ハンカチ、モップ
手帳、ペン、インク
石鹸、電球、インク、アルミ板、銅線
帽子、マフラー
といったように売り上げの記録がある。
発見した紙束について【経理】を使用することが出来る。
《紙束への【経理】に成功した場合》
店の経営状態はそう悪くはなく、姉弟二人で暮らすぶんには大きな問題もなさそうに見える。アルミ板、銅線ば常に店にあるものではなく、注文品として仕入れたようだ。
ごく普通の教会。妥当に行くならキリスト教だが、一般的な宗教であればというかそれっぽければ詳細は問わない。ちょっとした庭木の整った庭の奥に、そう古くは見えない白い壁にステンドグラスが目立つ大きくはない建物がある。尋ねれば中にはシスターの姿があり、彼女は探索者たちに気付くとそちらに目を向け挨拶をするだろう。
・シスターから得られる情報
○少年について
一年ほど前に遠方に出かけた両親を事故でなくして以来親代わりとなって弟の面倒を見ていた姉が行方不明になってしまってとてもふさぎ込んでいる。今までは元気でよく喋る子で、公園で活発に遊んだり教会に遊びに来たりもしていたが、今ではすっかり元気がなくなり奥の部屋で食事もあまり取らずに俯いていると言う。自分の立場などを明かし交渉すれば少年に直接話を訊けるよう奥の部屋の方へ案内してくれる。
○城主について
城主については何度か教会に訪れたのを見たことがあるが、とても人々のことを気にかける人の良さそうな男性であったという印象を抱くに留まる。普通に陽の下を歩き教会で祈りもささげていたため、とても吸血鬼などといううわさが立つような人間には見えないという。地元のことにはあまり詳しくないといった理由から、何か詳しく知りたいのであれば地元の人間に訊くことを勧めてくるだろう。
○吸血鬼について
ごく一般的な吸血鬼についての情報なら話すことが出来る。KPがモンストロルムを所持しているのであればそれを参照してもよいし、ネット検索などで出てくる情報などを簡単にまとめてもよい。
○行方不明事件について
(※事件についての説明そのものは他で話を聞いていた場合とほぼ同様の回答となる)
2週間ほど前から何件か行方不明事件が発生しており、消えたのは旅行客数名と地元の人間が二人。旅行客→地元の人間一人、の順に行方不明になったらしいが、警察が調べてはいるというが詳細は分からない。今までこの辺りでそういった事件を聞いたことがなかったためこのような事件が起こるのはとても不安であり、一刻も早く行方不明者が見つかることを願っていると語る。
■扉の前
礼拝堂の奥から通された部屋、シスターが扉越しに少年に向け話しかける。あなたとお話したいって言う人が居るの、少しいいかしら、という言葉に室内から返事はなく、シスターはすこし困ったような表情を見せる。
■少年の話
ベッドや小さな丸テーブルと椅子がある程度の簡素な部屋の隅に、元気のない少年がうつむいて座っている。 少年から訊き出せる話は以下の通り。
○ウェンディとリック
姉はいつも夕方になると公園の池で遊んでる自分を迎えに来てくれていた。最近危ないからとあまりであるかないように言われていたのに、大丈夫だと思っていつも通り遊びに行ってしまった。そうしたら、あたりが暗くなっても姉は来なかった。と姉がいなくなったときのことを話す。
言葉にするにつれ、自分のせいで姉が行方不明になったという罪悪感から少年の口調は徐々に弱々しくなっていく。
○行方不明事件のこと もしくは ウィンストンについて
行方不明事件やウィンストンについてを聞くと少年は何かを隠している様子がある。問い詰めても少年は話せない、約束をした、と拒否しようとするが、行方不明のウィンストンを探しているということを話すか、【説得など】の対人ロールに成功すると彼は先日ウィンストンに会ったと話す。
数日前、姉を探して外を歩いていたときに町のはずれでウィンストンに出会い、危ないからと協会近くまで送り届けられたという。自分を家まで届けた後ウィンストンはすぐに居なくなってしまったが、姉のことは大丈夫だといっていた。そのために人を呼ぶ(手紙を出す)のだと言っていた。ウィンストンが何か理由があって身を隠しているといっていたが、何があったのかもどこえ行ったのかもわからない。ただ、ウィンストンは黒いローブをかぶって顔を隠していたがひどく苦しそうにしているように見えた。具合が悪いのをばれないように顔を隠していたのではないか、と姉とウィンストンの身をあわせて心配していることを打ち明ける。
○まちのはずれに(ウィンストンとであった場所)ついて
町のはずれには墓地とぼろぼろの廃屋があると話す。何か物音がした気がするが、怖くて見にいけなかったという。また、ウィンストンからも近付いてはいけないと言われたためいう通りにそれ以降近付いていないことも話すだろう。
■会話を終えると、リックは探索者になんとか姉とウィンストンを探し出して助けてもらおうと頼み込む。
※探索必須箇所ではないが、協会での会話後にKP向け情報の条件に当てはまる状態であれば教会から出た後のタイミングで探索者がここを通りかかるようにするとよい。
静まり返った公園。
ちょっとしたベンチと小さな池のある広場のような造りで、片隅にはきもちばかりの遊具が設置されている。公園の向かいにには郵便局があり、公園の入り口付近には1人の男が倒れている。男に近づいて声をかけるなどすると酔って寝ているだけだとわかるが、声をかけなかった場合人の気配で目を覚ました男のほうから探索者に絡んでいく。
■酔った男からの話
そういや知ってるかあんたら。最近夜家にいるとよお、外から物音が聞こえてくんだよ。おれんちはもう使われてねえ古い墓と誰も住んでねーボロ家のすぐそばで他に人なんか居ねーのによ。城主さまがいなくなったからあんたら探偵かなんかなら調べてきてくれよ。金は出さねーけどな!
・男との会話により、町のはずれに墓地と怪しい廃屋があることがわかる。
公園の向かい側にある郵便局。必須探索箇所ではないため、訪れなくとも構わない。
小さな建物であり、特段変わった雰囲気はない。建物の中には若い局員の男性が1人いるのみだ。ここでは局員の男性に対し聞き込みを行うことが出来る。
探索者たちが探偵やその他ウィンストンを探しに町へやってきた事実を明かした上で郵便局員男性に郵便物についてや何か変わったことがなかったなどと訊くと、彼から『ウィンストンが行方不明になったと訊いた直前に差出人がウィンストンの手紙がポストに投函されていた』『宛名は覚えていない』という情報を得る。
☆以下の項目は探索者からその話題に触れたときのみ回答する。
「ウィンストンの手紙のあて先」
→「記憶にないが、町の住人ではなかったことは覚えている」
更にその手紙のあて先がHO1でなかったかと尋ねた場合、質問者の【幸運】に成功すると彼は「確かそんな名前だったかもしれない」と回答する。
「手紙の詳細」
→「見覚えのあるものより乱れた字であて先や差出人が書かれていた。インクが滲んだのか白い封筒が少し汚れていて、今思えば何かあったのかもしれない」
※パトリスからの手紙は白い封筒ではなく茶封筒である。
「差出人がパトリスの手紙」
→「記憶にない」
もし交渉技能によって彼に郵便物の送付履歴を調べさせるのであれば、パトリスがこの郵便局から手紙を送ったという事実は存在しないとわかるだろう。
●墓地
古い寂れた墓地。石碑はボロボロで風化したものもある。供え物もなく手入れされている様子すら見受けられない。もう使われていない墓地。すぐそばに廃屋のような建物がある。【目星】【追跡】などに成功すると建物の周囲に真新しい足跡があることに気付く。
《屋敷外部》描写
町のはずれの寂れた墓地のすぐそばにあるその洋館は、まさに幽霊屋敷という言葉が似合うほどにぼろぼろに痛み古びていた。どれほど手入れがされていないのだろうか。庭木や雑草が荒れ放題で、とても人が住んでいるようには見えない。
【目星】
→成功
地面には草を踏み歩いたような形跡があり、最近誰かがここを訪れたようだ。
【聞き耳】
→成功
特に物音はしないようだ。
正面玄関で【鍵開け】、もしくは進入目的で【目星】で周辺を探索すると裏口の鍵の壊れかかったドアから内部に進入することが出来る。
《屋敷内部》
外観の通りあちこちに埃が積もり、やはりほとんど廃墟に見える。しかし目星を使うまでもなく、床の埃の上に足跡が残っていることがわかる。確実に最近人が出入りした様子が伺えるだろう。足跡が続いているのはどうやら奥にある部屋のひとつのみのようだ。
《奥の部屋》
広々とした部屋にはいくつかの本棚が並び、その奥には机と椅子、そして棚が置かれている。廊下同様に部屋は全体的に埃っぽさや傷みが酷いが、所々埃のない場所も見受けられる。そして部屋の片隅には、用途のわからない作りかけの機械のような物が置かれていた。一目見てその金属は真新しく、埃っぽさも感じられない。
《本棚に【図書館】》
→成功
古い書籍や、何かオカルトめいた本が並んでいる。そしてその片隅に古い日誌のようなものがいくつも収められていた。更に【アイデア】に成功するとそれがパトリスの部屋にあったものとよく似ていると感じる。調べるのであればパトリスの部屋にあったものよりもずいぶん古いもののようだ。傷みが激しく、読み取れるページはそう多くはない。
<日誌の内容>(それぞれの文章は日付が変わっている)
突然目的のために生きた人間が材料に必要だなどといわれても理解できるわけがない。昔から変わった男だとは思っていたが、いくら親友とはいえ応じられることとそうでないことがある。
ウィンストンの要望に対し、近頃時折町を訪れる男が進言をしてきた。彼が言うにはそれさえ成功すればこの町の現状を打開することも容易なほどの力が手に入るという。しかしやはりその条件をお飲むことは出来ない。
しばらく熟考したのちに譲歩案を提案してみた。冷静になってみれば私もどうかしていたが、それほどに追い詰められた状況だったのは事実だ。ウィンストンは私の提案を受け入れた。本当にすべてがあの男のいう通りになるのなら、親友は生きながらえ町も救われる。そんな夢物語が現実となればどれほどいいだろうか。
(前のものからしばらく時間が経過した日付)
トレイラーの人間は魔術を扱うとは聞いていたが、まさか本当にこんなことが実現するとは。あの力が抑止力となるなら、この町も平和になるかもしれない。本心を言えばあれだけの力を悪用されたときのことを考えると恐ろしくもあったが、幸いウィンストンは私のとの約束通り私の協力要請に応じてくれている。あれ以来無理な要求をしてくることもなく、本人も現状に満足しているようだ。
望めば私にも同じ身体を作るとあいつは言ったが断った。私は人として死ぬべきだ。そうしてこそ、ウィンストンはこの町の唯一の英雄であり続けることが出来るだろう。そのほうが何かと便利だろう。そうは言ったが、正直恐ろしさの方が強かった。お前をよき友人だとは思うが、お前のようにはなりたくはない。そう思うことはウィンストンを傷つけるだろうか。
墓地を町のはずれからトレイラー家の敷地内へ移設新築した。英雄であるトレイラー家の見守る地へという理由があれば反対もないだろう。 ここまで来て引く理由もない。これからこの現状を維持できるよう可能な限りの協力は惜しまず彼に協力をしようと決意の言葉を口にすると、ウィンストンは受けただけの恩は返そうという言葉とともに珍しく笑って見せた。
《机に【目星】》
→成功
引き出しの中に一冊の日記と、思議な図形の描かれた青い石、そして小さなタグのついた鍵のようなものを発見できる。
<古びていない日記>
しばらくはごく普通の日記が綴られているが、ひとつきほど前からの記事が目に止まる。そこから先、書かれた日は変わっているようだが非常に文字が乱れており、日付も書かれていない。
過去にこの町とウィンストン様をお導きになった方とお話をした。近い未来に恐ろしい出来事が起こるとおっしゃったのを聞いて以来恐ろしくて仕方がない。これから起こるという災厄の詳しいお話までは聞かせていただけなかったが、このままでは街はいずれ火の海に包まれ屍の山を残すのみという。街の外へ逃げれば助かるということでもないというなら、いったい何が起こるというのでしょうか。
あの方の仰ったとおりウィンストン様も最近はどこか体調も悪そうで、今の衰えたウィンストン様ではきこの街ひとつを守ることもままならないかもしれない。
ウィンストン様を完全なお姿に出来れば、ウィンストン様がこの街だけでも護ってくださるかもしれない。お聞きしたお話をウィンストン様にお伝えすれば何とかして下さるかもしれない。
どうしてウィンストンさまは私の言葉によい顔をしなかったのでしょうか。この町を救えるのはきっとあなた様しか居ないというのに。それがあなた様の役目であったはずなのに。そのためにあなたはいらっしゃったのに。そのために私はお仕えしてきたのに。
ウィンストン様にそのご意思がないなら、ウィンストン様にできないというのなら、私がやるしかない。私がウィンストン様のために尽くせば、ウィンストン様はきっと応じて下さる。おじいさまのように、私がウィンストン様をもう一度支えてみせる。過去に成し遂げられなかった本当のあなたの目的を、かなえる手助けをしてみせる。
準備と覚悟を、整えなければ。
大勢の人が助かるのなら、少しの犠牲は仕方のないこと。仕方のないこと。仕方のないこと。しかたのないこと。
ウィンストンさま、一体あんなお身体で、どこへ行かれてしまったの。こんなことになるなんて。私はウィンストン様とこの町を救いたいだけなのに。
どんな理由があるにしても、ウィンストン様の力がなければこの町は救われない。
どうか早く、ご無事にお戻りになって下さい、ウィンストンさま。
★日記を読んで
この日記は、文体や筆跡などからPCの推理やKPが妥当と考える技能の成功によってパトリスが書いたものではないかと思い至ることが可能である。
書き手がパトリスだと気付いた探索者は、自分たちの依頼人である人間の書いた不穏な手記に対し【SANチェック】。
■減少 0/1
<青い石>
不思議な印象を受ける青い石。
探索者がそれを手に取ると、薄暗い部屋の中でたまたま日光を反射したその石が壁に奇妙な文様を投射させる。ウィンストンの部屋の前で文様を見たものは【アイデア】でそれと同一のものであることがわかる。
→《文様に【アイデア】成功》
窓からの光に反射した青い石の光が壁に映る あなたはこれと同じものをうぃんすとんの部屋の扉に触れたときに見たと気付く。
<鍵>
墓地地下、と書かれている。
(※墓地というのは新築された城の敷地内にあるもの。この屋敷の隣にある墓地に地下に該当するものはない)
■棚に【目星】
色々な古びた雑貨が並んでいるが、大半が埃を被っている中「cellular solvent(細胞質溶解剤)とラベルのついた綺麗な小瓶」がふたつ、埃も被っていない状態で置かれているのが目に付く。
■謎の機械
ガラスの容器のようなものの横に銅線の繋がったいびつな金属板のようなものが取り付けられている。銅線は片側が金属板に取り付けられ、もう片側はどこにも繋げられていない。長さも不揃いであり、あまりしっかりとした作りには見えない。なんらかの作りかけの機械であることは想像できるが、それが何に使われるものなのかは見当がつかないだろう。
また、機械の陰に液体の入ったビンがいくつか並び、注射器の入ったケースが置かれている。
【機械修理】などで追加で情報を得ることができる。
《【機械修理】などの機械に関する技能》に成功
そこに置かれている機械が一般に知られているような機械の類ではない奇妙なものであるということがわかる。
城の裏手、森のほど近くに石碑のようなものが立ち並んでいるスペースがある。立ち並ぶ墓石と大きな石碑のようなものがひとつ。見知らぬ名前がいくつか刻まれている。使用可能な技能は【聞き耳】【目星】。
【聞き耳】
→成功
どこからか人の声のようなものがするような気がする。何を言っているのかは聞き取れないが、声の聞こえる方向はあなたの足元、地面の下のようにも感じられた。
【目星】
→成功
何か石碑のようなものの陰に、分かりにくいが鍵穴と手を引っ掛けられそうなくぼみのようなものがある。 コルボーン邸にて入手した鍵を使い開錠することで地下への階段が出現する。鍵を入手するより先にここを訪れた場合、【鍵開け】を試みることを許可してもよい。
石碑に取り付けられている鍵を開く。地面にある擦れあとを見るに、石碑をスライドさせることが出来そうだ。冷たく重い石碑を押すと、それは見た目よりも容易くずず、と動き、その下には薄暗い階段が地下へと続いていた。下のほうにはぼんやりと人工的な明かりのようなものが目に付く。
薄暗い階段を降りきった先、ほんやりとライトに照らされた奥に鉄格子のようなものがあるのがわかった。そのライトの奥にはふたつの人影のようなものがある。
《地下内に【目星】》
→成功
壁に鍵束を掛けるためのフックのようなものがついていることに気付くが、フックにはなにもかけられていない。しかし、その近く、壁のそばの床にに小さな鍵がひとつ落ちていることに気付く。更に【アイデア】に成功すると、その鍵に施された装飾はトールン城の入り口にあったドアノッカーとデザインが似ていることが分かるだろう。
※小さな鍵:《トールン城:城主の部屋》の鍵
《格子の向こう》
牢屋の奥に、うずくまって動かない二つの人影。どちらも20代程度の小柄な女性のように見える。彼女たち小さくうめき声を上げており、その焦点はどこに向けられているのかもわからない。薄汚れた身に纏う同じく薄汚れた服は格子を隔てある程度の距離を置いている中でもわずかに悪臭を漂わせていた。
言葉にもならないうめき声をあげ涎を垂らす女性二人は、少なくともまともに会話が成立するような状態には見えはしないだろう。
部屋の奥の床には彼女たちの所持品であろうふたつの大きな鞄が無造作に転がっている。
無残な女性二人の姿を見た探索者は【SANチェック】
■減少 1/1d4+1
■開錠
(小さな鍵(もしくは【鍵開け】)+コルボーン邸にある青い石の二つを使うことで中に入ることが出来る)
古びた屋敷で手に入れた石を所持している人間が扉に近づくと、所持していた石が淡く光を放つ。それを手に持ち扉の前に立つと、扉を含む部屋前の壁が青く発光し不思議な文様を浮かべ、次の瞬間ぱりんと何かが割れるような音を響かせ部屋の封印が解かれる。
扉を開けばそこには着いた雰囲気の整った部屋があった。シックな色調で整えられた部屋には古い机と、ベッド、ガラス戸のついた棚が並んでいるのがわかる。
使用できる技能は《机に【目星】》《戸棚に【目星】》。
■机
年代物の落ち着いた色調のシンプルな机。机の上にはいくつかのメモが散らばっている他、机には引き出しも備え付けられている。
《机に【目星】》に成功
机の中にはさまざまな古びた手記のようなものが収められているが、この場で何が書かれているかを読み解き理解することは難しいものが大半であろう。その中にひとつ、比較的新しい手帳のようなものが収められているのが目に付く。日付は数ヶ月ほど前のものから一週間ほど前までのものがまばらである。
<日記>
病に苦しめられることも老い朽ちることもない身体と手に入れ、膨大な時間を手にさえすれば私は己のすべてを満たせると思っていた。少なくとも、はじめのうちは私は満たされていた。この探究心を思うままに満たし、様々な知識に触れ、その見返りは些細な約束ひとつで良かった。しかし、情熱とはいつかやがてその熱を失うということを、私は長い時を経て始めて理解した。
悔いはない。しかし、自身の感情に気付いてしまった今、胸にあるのは虚しさばかりだ。
そろそろこの命を終わらせることを考え始めた。望みさえすえばいつでも私はこの世を去ることが出来るだろう。亡き友人と交わした約束はあくまでも私のこの身体を維持する代償だ。必要のなくなった身体を捨てるにあたり、その約束もこれにて終了することだろう。
しかしいくら熱が失せようとも、私の築き上げた成果を他人にくれてやるつもりはない。この命とともにあの世まで手放すまい。
最近、パトリスの様子に違和感を抱くことがある。元々神経質な部分はあったように見えたが、それにしてもあまり正常な状態であるとは感じられない。私に何か出来ることがあるとも思えぬが、とはいえ話を聞く必要はあるだろうか。
災厄というのは何を指しているのか。そもそもあの娘は私の力を過信しすぎている節があるように見受けられる。ただ生きながらえ、人間よりも少しばかり強い力を得ているだけの私に彼女の言うような大層な何かを打開することが出来るとも思えない。
先のことなど誰にもわかりはしないと告げ気にせぬように促したが、おそらく納得はしないだろう。しかし、私にはこれ以上どうすることも出来なければ、どうするつもりもない。正規の手法にて生きた人間から作られた原ショゴスが正常に私の意識下に収まるかすら定かではないが、これはあの娘にとって逆効果の言葉となりかねないだろう。
町で行方不明者が出たという。詳細についてパトリスに尋ねたところ、やはり様子がおかしい。私の研究室へ無断で足を踏み入れたのではないか疑わしい形跡もある。好ましい兆候ではない。この異端の技術は、人間が容易に扱えるものではないということを私は良く知っている。
もし彼女の仕業であるならば、それを止めるのはこの世を去る前に果たすべき私の最後の義務である。
■棚
ガラス戸のついた古い戸棚だ。中には紙束やラベルのついたガラス瓶が並んでいるのが見えるが、戸には古びた鍵がかかっている。
《棚に【目星】》に成功
ガラス越しにラベルが見える。鍵つきの棚の中にcellular solvent(細胞質溶解剤)とラベルのついた小ビンがふたつと紙束がある。また、それらの合間、棚の奥の板に赤い線で何か描かが描かれていることに気付く。
※戸を開くには【鍵開け】に成功するか無理やり鍵を鍵を破壊して開く、もしくはガラスを割る必要がある。しっかりと対策を行わずにガラスを割った場合、棚の周囲にいた者は【幸運】判定を行い失敗で1D3のダメージを受ける。
→《紙束に【図書館】》に成功
何かの機械の設計図に見えるが、紙束は非常に古びておりその文字のほとんどがかすれていて読めない。探索者たちはこれらの機械に一切見覚えもなければ何に使われるものなのかも見当がつかないが、その中には「Pr Sh gth Tra m on t」 というかすれた文字があるのを読み取ることが出来る。また非常用という文字とともに《cellular solvent(細胞質溶解剤)》という項目があり、そこには使用法として経口、注射、塗布、と書かれている。効果についても説明があるようだが、読み取ることは難しいだろう。
→《戸棚の奥》
棚に収められていた物品を退かすと、そこに描かれているものがあらわになる。そこには目にしたことのない文様や文字などが刻まれ、見るからに魔方陣といった様相を呈している。その円形の中央には手形のシルエットのようなものが描かれていた。
この手形に誰か一人が手を当てることで転移の魔術(本シナリオのオリジナル魔術)が発動し、その場にいる探索者全員が《地下室》へ転送される。また、魔方陣に手を当てた探索者は1D2×探索者の人数のMPを消費する。
■地下へ
気付けばあなたたちは見覚えのない部屋にいた。白熱灯で明るく照らされた壁や床は飾り気のない冷たい石材がむき出しになっており、それは古い地下室を思わせた。その室内にはあなたたちがみたこともないような金属の塊にも似た大掛かりな機械のようなものや薬品棚が並び、中央には巨大な円筒状のガラスと平たい円錐状に広がった金属板のようなものが設置されている。
何もかもが明らかに異様なその空間。しかし何より目を引くのはその中央の円筒状のガラスの中に蠢く土気色の物体であった。
ガラスの中には人の肌のような色をした、否、人の肌そのものといえる質感をしながらもまるで液状のような柔軟さでうねる肉の塊が蠢いていた。それはその表面に眼球や人の手足、臍のような器官を作り出しては形を崩すことを繰り返す。人の呼吸をするのと同じような規則でその肉を上下させるその身体の中央には傷口のように大きく開いた裂け目があり、腸や臓器のような器官が覘いていた。それはあなた方の侵入に反応を示すこともなく静かに脈打つ。
【SANチェック】
《突然の転移》0/3
《冒涜的に蠢く肉塊》1/10
●《部屋の中にあるもの》
・部屋の奥にある棚。上の部屋で見たような紙束やビンが多数収められている。薬品ビンはほとんどがからのようだが、cellular solventと書かれた液体の入ったビンが何本か収められている。
・ガラスに収められた何か。上記の描写より細かいものは特に用意していない。人体パーツが粘土のように変形していくさまが良く見えることだろう。
・奇妙な機械群。機械だということはわかるが、何をするための機械なのか探索者たちには理解できない。
・機械や棚が並べられているのと反対側の壁に暗い階段が上へと続いている。
軽く全体を見るか、探索者が階段へ近づいた時点で《遭遇》の項目へ
「そこで、何をしておられるのですか?」
不意に室内に女の声が響く。
「どうやって中へ?ウィンストン様を探し出していただくことは出来ましたか?」
階段の上からこつこつと靴音を立てながら、それはやがてあなたたちの前に姿を現すことだろう。そこにはこの城の使用人、パトリスの姿があった。彼女はあなたたちに怪訝そうな目を向けながら、その中にウィンストンの姿はないことを確認するとすぐさま続けて口を開く。
「(HO1探索者名)様方、今一度お願いいたします。どうかこの町のためにウィンストンさまを探しだしてくださいませ。ウィンストン様はお優しい方ですから、きっと人を殺めることに躊躇ってしまうのです。先に準備をしてしまえばきっとあの方も受け入れてくださるに違いありません。これも全て町のためなのです。私は役目を果たさねばなりません。どうか邪魔をしないでくださいませ。」
そう言う彼女の視線の先には円筒状の機械がある。そこであなたたちは、警戒とともに一歩を踏み出したパトリスの背後にもうひとつの人影があることに気付く。それは、年若い少女の姿だった。俯いた幼女の瞳はとてもうつろで、それはどこか地下室にいた女性たちのそれを思わせた。
「あの方の手によって、もう一度この町は救われるのです。さあウェンディ、お進みなさい。」
その言葉に、少女は言葉もなくパトリスの後に続く。パトリスはあなた方に警戒のまなざしを向けながら、ゆっくりと機械のほうへと足を進めようとするだろう。
《ここで探索者全員に【目星】を振らせる》
成功→ウェンディがその手に一本の注射器を持っていることに気付く。
■狂気に落ちた女パトリス
STR:10 CON:14 DEX:11 SIZ:12
耐久:13 MP:6 DBなし
《パトリス:狂気》で使用される攻撃技能注射器による攻撃:命中50%
攻撃を命中させた際にはさらに目標値30%でダイスを振り、これに成功すると注射器の中身が犠牲者の体内に注入されたことになる。これの中身はKPが《細胞質溶解剤》か《精神破壊剤》のどちらかを任意で選ぶ。それぞれの効果について戦闘用に改めて簡潔にまとめたものを記載するが、薬品の詳細についてはキーパーコンパニオンの該当ページ、もしくは《書斎》《墓地:地下》の項目にて。
《精神破壊剤》 キーパーコンパニオンP103
ダメージなし。
POT12と犠牲者のINTの対抗ロールを行い、失敗した場合犠牲者は1D6のINTを永久的に失う。
また、その恐怖から1D3/2D6の正気度を失う。
《細胞質溶解剤》 キーパーコンパニオンP102
ダメージ1D6。
幸運ロールを行い、失敗した場合犠牲者はダメージ1ポイントにつき1のAPPを永久的に失う。
また、ダメージによって身体の一部が解け落ちるが、これはPLとの相談にてPLが希望した部位にそのような損傷を受けたということにするとよい。この薬品によって探索者のHPの半分以上が失われた場合の損傷は手足を失うなど大きな損傷を受けたということになる。
■自我のない少女ウェンディ
STR11 SIZ11 DEX14 INT12
ウェンディのステータスは最低限のみ記載しているため、必要に応じてKPの任意で数値を設定する。
■クライマックスの処理について
ここでは探索者が大きく分けて《即座にパトリスに対し敵対姿勢、物理的に行動を阻止する姿勢を見せる》《パトリスへの説得を試みる/パトリスの気を引き不意をつくことを狙う》の二種類に分けてシナリオ進行を想定している。卓や探索者によって様々な行動が想定されるため、ここからは以下の項目を参照にエンディングまでの流れは基本的にKPによるアドリブで行うことになる。
パトリスに対しすぐに攻撃姿勢に入る場合ば《パトリス:焦り》の項目へ。パトリスに対し説得や気を引くことを試みるのであれば《パトリスの説得について》を参考の上、《パトリス:焦り》か《パトリス:狂気》のいずれかの項目へ。
■パトリスへの説得行為について。
パトリスはSAN0の狂人であるため、一切の説得が通用しない。もし彼女に説得を試みた場合、少しでも彼女の行動を否定したりその行動を思い直すようになどといった発言してしまうと彼女は否定的な態度をとられたという理由で過剰に反応し探索者たちに激昂してしまう。パトリスを刺激してしまった場合は《パトリス:狂気》の項目、言葉によって一切刺激しないまま彼女に思惑がばれてしまった際には《パトリス:焦り》の項目へ移行。
もしKP判断でうまく気を引いて奇襲に成功したと判断出来る状態を作ることが出来た場合にはそれぞれ《ウェンディの安全を確保出来た→【ED1】》《奇襲によってパトリスを即時殺害した→【ED2】》へ。
パトリスを先に取り押さえた場合は下にある★の項目を参照し処理する。
■《パトリス:焦り》におけるNPCのの基本行動
探索者が行動を起こした時点でターン制の処理へ移行する。まずパトリスはすぐさまウェンディに機械へ向かうように指示し、そこからDEX順の行動となる。ウェンディの原ショゴス化を防ぐためには機械を作動させることを阻止しなければならないが、2ターン目の時点でウェンディは自らに精神破壊剤を用いてしまうためウェンディを完全に無事な状態で救うための猶予はそれよりも短い。しかしうまく二人の行動を妨害することが出来れば猶予を伸ばすことも出来るだろう。
以下が基本行動となるが、探索者の妨害などがあった場合にはパトリスはウェンディを原ショゴス化させることを最優先に考え、ウェンディを取り押さえられてしまわないよう行動する。
・1ターン目
ウェンディ:機械へと向かう
パトリス:機械へ向かう ウェンディに自らに注射を打つように指示する
・2ターン目
ウェンディ:機械の内部で自らに《精神破壊剤》を使用する(1D6のINT喪失)
パトリス:機械を起動させウェンディを原ショゴスへと変える。【ED4】へ
・3ターン目
ウェンディ:原ショゴス変容タンクを起動させ原ショゴス化。【ED4】へ。
■《パトリス:狂気》におけるNPCの基本行動
パトリスはまず戦闘開始と同時にパトリスを取り押さえようとした場合と同じくウェンディを機械へと向かわせるが、パトリスは自身も注射器を取り出し探索者と敵対する。パトリスは探索者に対して非常に敵意を抱きウェンディへの指示よりも接近や攻撃行動を行った探索者への攻撃を優先する。
★ルートに関わらずウェンディを確保するより先にパトリスを取り押さえた場合、パトリスが発言可能な状態にあると焦ったパトリスは《精神破壊剤》の使用工程を飛ばし機械を作動させるように命令してしまう。
この場合ウェンディが一度機械の外に出てスイッチを押すという工程が挟まるため、探索者とウェンディのDEX対抗ロールや、KPが妥当であると判断するPLの宣言に対し一度だけウェンディを原ショゴス変容タンクの犠牲になってしまうのを阻止する試みを行うことを認めてよい。成功した場合は【ED1】へ。
また、それまでの流れなどを考慮の上でKPの任意にて裏でウィンストンの幸運(60)を振ってもよい。成功した場合は【ED3-B】の描写へ。
KPは上記の行動指針を元にPCの行動に応じた処理を行う。
★ウェンディを生存救出したが精神破壊剤が使用されてしまっていた場合は【ED3】へ。
《パトリス:焦り》
あなたたちの存在は脅威になる。そう気付いたはパトリスは強い焦りの表情を見せる。それと同時、彼女は悲鳴にも似た声を上げた。
「ウェンディ!早く機械へ向かいなさい!!」
その言葉に従うように、表情も変えぬ少女は部屋の中央に設置された機械へと走り出した。
生存した状態でウェンディを救出することが出来た場合は【ED1】、パトリスを殺害しウェンディを救出した場合は【ED2】、ウェンディが原ショゴス化してしまった場合は【ED4】へ。
《パトリス:狂気》
「この町を救えるのはウィンストン様しかいらっしゃらなかったのにあの人はあろうことかそれを拒絶して姿を消してしまった!!だから!!あなたたちに彼を探すように依頼したのに!!どうして邪魔をするのです!!この町を救うことができるのはもう私しかいないのです!!そしてウィンストンさまに思い直していただかねば!!全ては滅びを迎えるのです!!!」
「その邪魔をするというのなら、邪魔をするというのなら、ああそうだわせっかくだから、あなたたちに手伝ってもらえばいいのかしら!一人より人数は多いほうがいいわ!!そうに決まってる!!皆で町を、国を、世界を護るのです!!」
早口で捲くし立てるように言葉を続ける彼女は、それまでの彼女の様子と打って変わった狂気を滲ませ、それは彼女がまともに言葉の通じる相手ではないとあなたたちが理解するには十分なものであっただろう。
パトリスはあなたたちに強い敵意を向ける様子をあらわにしながら、懐からひとつのケースを取り出す。その中身に収められていたものを取り出した彼女はケースを床に捨てるとあなたたちに向け液体の入った注射器の鋭い針を向けた。
→《戦闘開始》
にパトリスを殺害した場合は【ED2】、パトリスを殺害せずにウェンディを確保した場合は【ED1】へ。
■ED1 古城は眠る
得体の知れない機械の前に立つうつろな瞳の少女をパトリスの元から引き離す。どうして邪魔をするの!!と甲高い声で叫ぶ彼女の声。恨み言、助けを請う言葉、恐怖の言葉、彼女の口から続けられたそれらの悲鳴は、がしゃんという大きな衝撃音にてかき消された。円筒状の機械の破片が壁や床に当たり金属音を立てて跳ねる中、パトリスは呆然とした表情で目を丸くする。突然の出来事に動揺するのは、おそらくあなたたちも同様であっただろう。
縋る先を失ったパトリスが力なく床に膝をつくのと部屋に響いた異音があなたたちの耳に届くのはほぼ同時のことだった。ぱきぱきと卵の殻を割るような、硬いものがひび割れる音。やがてその室内に天井からはらはらと土ぼこりが舞い始めていることに、あなたたちは気付くだろう。壁や天井に走り始めた大きな亀裂はこの部屋が倒壊するまで時間がないことをわかりやすくあなたたちに示している。
この部屋にある出口らしいものは階段ひとつ。それがどこに続いているのかはわからないが、あなたたちはそこに向かわざるを得ないだろう。急がなければこの倒壊に巻き込まれることは明白だ。暗い階段に足を踏み出せばほどなくして階段と部屋の入り口は瓦礫によって隔たれて行く。あまりにもあっけなく、瓦礫はあっというまにあなたたちの退路を断ってしまった。
そんな中、轟音にまぎれて何かの羽音が聞こえる。【目星】に成功した探索者はそれの音の主が翼の欠けた不恰好な蝙蝠であるのを目にするだろう。
『階段を上りきったら、行き止まりの壁に手を当てたまえ』
階下へ向かう羽音があなた方の頭上を通り過ぎると同時、そんな声があなたたちの耳に入る。それが羽音と轟音の混じる中で聞いた空耳だったのか、あなたたちに向けられた言葉だったのか知る由はないだろう。振り向けどそこには最早なんの姿もなく、階下の部屋がかすかに窺える小さな瓦礫の隙間が開いているのみだ。
長い階段を上りきれば、そこには壁があった。出口が開けているわけでも扉があるでもない。しかし目を凝らしてみれば、そこには城主の部屋から小部屋へと移動したときに触れたのとよく似た文様と手形が描かれているのが暗闇の中にかすかに見える。
誰か一人がそれに触れた時点で、視界は白く染まる。暗闇から突然明かりを目にしたあなたたちはくらむ視界の中でそこが城主の部屋であることに気付くだろう。どこか遠くから瓦礫の崩れるような音が響いていたが、その音も聞こえなくなるまでそう時間はかからなかった。
その静けさとともに、あなたたちは不本意に巻き込まれることとなったその冒涜的な事件が真相ごとどこかの暗闇に埋もれてしまったと感じることだろう。
行方不明となっていた旅行者はやがて警察で保護され、あなた達が助けた少女もしばらくののちに正気を取り戻した。塞ぎ込んでいた少年は姉が帰ってきたとあなたたちにこれ以上ないほどの感謝を繰り返す。それは後日あなたたちの元に手紙という形で再び届けられることとなる。そこには感謝の言葉とともにあの後町は何事もなく平和であるということ、風の噂でパトリス・コルボーンらしき人物が記憶喪失状態でクラウドホースから離れた町で発見されたこと、そして城主だけは結局あのまま行方不明のままとなったことが綴られていた。
あなたたちに届いた手紙はもう一通あった。あて先の住所も書かれていなければ消印もなく差出人名もわからない手紙には、「私の手紙はおそらく君たちに届くことはなかったのだろうが、君たちのおかげで目的を果たすことは出来た。最後まで君たちとまともに言葉を交わすことも出来ないまま危険に晒してしまったことを詫びる。」と短い文章が綴られてた便箋と多額の現金が納められていた。
後日、吸血鬼が住んでいたという城が売却され観光地として整備中だという噂ががどこからか流れてくることがあるかもしれない。その売却額が封筒に同封されていた現金とほぼ同額であったことに、あなた達は気付くだろうか。
■ED2 古城に眠る
どさりと地面に倒れた身体。先ほどまで響いていた狂気と恐怖に満たされていた甲高い声はもうない。完全に絶命した一人の女を前に、遺された少女は表情を変えることもなく静かに佇んでいた。
(探索や行動、RPがあればいったんここで自由にさせてよい)
出口らしきものはパトリスと少女が現れた暗い階段の奥のみのようで、あなた達はやがて少女を連れその場を後にすることだろう。
静かな暗い階段を上がっていく靴音が響く中、【聞き耳】に成功した探索者は何かが湿った音を立てて蠢くようながこちらへ向かってきているような音を耳にする。それは地下で見た不気味な肉塊が蠢いていた音によく似ていた。しかしそれはあなたが気付いて身構えたころにはもうあなたたちの背後へと通り過ぎていた。振り返れどもそこに何者かの姿があるでもなく、遠くに小部屋の明かりが階段の入り口に淡く差し込んでいるのみだった。
階段を登りきったとき、そこにあったのは行き止まりでドアの類や通り道になりそうなものが何もないことを知る。しかし暗闇に慣れた目がその壁の中央に、城主の部屋から小部屋へと移動したときに触れたのとよく似た文様と手形が描かれているのを捉えた。
あなたたちのうち、誰か一人がそれに触れたその直後、あなたたちは階下から激しい衝撃音が響くのを耳にする。しかしその視界は白く染まり、それと同時にその音はあっという間に遠のいてしまった。暗闇から突然明かりを目にしたあなたたちはくらむ視界の中でそこが城主の部屋であることに気付くだろう。そんな中、どこか遠くから瓦礫の崩れるような音が響いていたが、その音が聞こえなくなるまでそう時間はかからなかった。
再び訪れたその静けさに、あなたたちは不本意に巻き込まれることとなったその冒涜的な事件が真相ごとどこかの暗闇に埋もれてしまったと感じることだろう。
行方不明となっていた旅行者はやがて警察で保護され、あなた達が助けた少女と旅行者たちが発見されたことによって連続行方不明事件は幕を閉じた。
塞ぎ込んでいた少年は姉を探し出してくれたあなたたちに感謝の言葉を繰り返すだろう。後日あなたたちの元には少年の改めての感謝の言葉とともにこれからは姉に今まで面倒を見てもらったぶん姉を支えていくという旨の言葉が書かれていた。
■ED3-A(パトリスが死亡している場合) 古城に眠る-Ⅱ
どさりと地面に倒れた身体。先ほどまで響いていた狂気と恐怖に満たされていた甲高い声はもうない。完全に絶命した一人の女を前に、遺された少女は表情を変えることもなく静かに佇んでいた。
(探索や行動、RPがあればいったんここで自由にさせてよい)
出口らしきものはパトリスと少女が現れた暗い階段の奥のみのようで、あなた達はやがて少女を連れその場を後にすることだろう。
静かな暗い階段を上がっていく靴音が響く中、【聞き耳】に成功した探索者は何かが湿った音を立てて蠢くようながこちらへ向かってきているような音を耳にする。それは地下で見た不気味な肉塊が蠢いていた音によく似ていた。しかしそれはあなたが気付いて身構えたころにはもうあなたたちの背後へと通り過ぎていた。振り返れどもそこに何者かの姿があるでもなく、遠くに小部屋の明かりが階段の入り口に淡く差し込んでいるのみだった。
階段を登りきったとき、そこにあったのは行き止まりでドアの類や通り道になりそうなものが何もないことを知る。しかし暗闇に慣れた目がその壁の中央に、城主の部屋から小部屋へと移動したときに触れたのとよく似た文様と手形が描かれているのを捉えた。
あなたたちのうち、誰か一人がそれに触れたその直後、あなたたちは階下から激しい衝撃音が響くのを耳にする。しかしその視界は白く染まり、それと同時にその音はあっという間に遠のいてしまった。暗闇から突然明かりを目にしたあなたたちはくらむ視界の中でそこが城主の部屋であることに気付くだろう。そんな中、どこか遠くから瓦礫の崩れるような音が響いていたが、その音が聞こえなくなるまでそう時間はかからなかった。
再び訪れたその静けさに、あなたたちは不本意に巻き込まれることとなったその冒涜的な事件が真相ごとどこかの暗闇に埋もれてしまったと感じることだろう。
行方不明となっていた旅行者はやがて警察で保護され、あなた達が助けた少女もしばらくののちに正気を取り戻した。(精神破壊剤が使用してしまっていた場合は)
塞ぎ込んでいた少年は姉が帰ってきたとあなたたちにこれ以上ないほどの感謝を繰り返す。それは後日あなたたちの元に手紙という形で再び届けられることとなる。そこには感謝の言葉とともにあの後町は何事もなく平和であるということ、しかし行方不明の城主は結局あのまま行方不明のままとなったことが綴られていた。
あの城はこれからどうなるのだろう。だが少なくともおそらく、あの町でこの連続行方不明が続くことはもうない。やがて吸血鬼が住む城の噂もゆっくりと廃れていくことだろう。
■ED3-B(パトリスが生存している場合) 古城に眠る-Ⅲ
得体の知れない機械の前に立つうつろな瞳の少女をパトリスの元から引き離す。どうして邪魔をするの!!と甲高い声で叫ぶ彼女の声。恨み言、助けを請う言葉、恐怖の言葉、彼女の口から続けられたそれらの悲鳴は、がしゃんという大きな衝撃音にてかき消された。円筒状の機械の破片が壁や床に当たり金属音を立てて跳ねる音に、どさりという音が重なる。そこには破片を散らせた壊れた機械と同じように、真っ赤な血液を周囲に飛び散らせ床に付すパトリスの姿があった。
(※ウィンストンの幸運からこちらのルートへ来た場合、上記の文章を【下記の文章】に変更する)
【得体の知れない機械の前に立つうつろな瞳の少女をパトリスの元から引き離す。どうして邪魔をするの!!と甲高い声で叫ぶ彼女の声。恨み言、助けを請う言葉、恐怖の言葉、彼女の口から続けられたそれらの悲鳴は、がしゃんという大きな衝撃音にてかき消された。思わず目を向けた先で円筒状の機械の破片が壁や床に当たり金属音を立てて跳ねる。次の瞬間、パトリスを取り押さえていた探索者は不意にパトリスが力なく崩れ落ち言葉を失くしてしまったことに気付くだろう。目を向ければ、そこには破片を散らせた壊れた機械と同じように真っ赤な血液を口元から散らし息絶えたパトリスの姿があった。】
一瞬の静寂。その直後、部屋にあなたたちの耳にぱきぱきと卵の殻を割るような、硬いものがひび割れるような異音が響く。その音ともに室内に天井からはらはらと土ぼこりが舞い始めていることに、あなたたちは気付くだろう。壁や天井に走り始めた大きな亀裂はこの部屋が倒壊するまで時間がないことをわかりやすくあなたたちに示している。
この部屋にある出口らしいものは階段ひとつ。それがどこに続いているのかはわからないが、あなたたちはそこに向かわざるを得ないだろう。急がなければこの倒壊に巻き込まれることは明白だ。暗い階段に足を踏み出せばほどなくして階段と部屋の入り口は瓦礫によって隔たれて行く。あまりにもあっけなく、瓦礫はあっというまにあなたたちの退路を断ってしまった。
「残念だが、お前の望み通りには行かぬのだパトリス。お前のいう災厄とやらがいかなるものであるかは知らぬが、それほどまでに救いを求めるのであれば恐怖を目にする前にここで命を落としたほうが幾分か楽であろう」
瓦礫の向こうから、聞き覚えのない男の声が聞こえる。しかしあなたたちに脚を止める余裕はなかった。その背に向けて、男性の言葉がひとつ、轟音にまぎれて届く。
「詫びる間すらなかったことを謝罪する。その階段を上りきったら、行き止まりの壁に手を当てたまえ」
長い階段を上りきれば、そこには壁があった。出口が開けているわけでも扉があるでもない。しかし目を凝らしてみれば、そこには城主の部屋から小部屋へと移動したときに触れたのとよく似た文様と手形が描かれているのが暗闇の中にかすかに見える。
誰か一人がそれに触れた時点で、視界は白く染まる。暗闇から突然明かりを目にしたあなたたちはくらむ視界の中でそこが城主の部屋であることに気付くだろう。どこか遠くから瓦礫の崩れるような音が響いていたが、その音も聞こえなくなるまでそう時間はかからなかった。
その静けさとともに、あなたたちは不本意に巻き込まれることとなったその冒涜的な事件が真相ごとどこかの暗闇に埋もれてしまったと感じることだろう。
行方不明となっていた旅行者はやがて警察で保護され、あなた達が助けた少女もしばらくののちに正気を取り戻した。(精神破壊剤が使用してしまっていた場合は)
塞ぎ込んでいた少年は姉が帰ってきたとあなたたちにこれ以上ないほどの感謝を繰り返す。それは後日あなたたちの元に手紙という形で再び届けられることとなる。そこには感謝の言葉とともにあの後町は何事もなく平和であるということ、しかし行方不明の城主は結局あのまま行方不明のままとなったことが綴られていた。
あの城はこれからどうなるのだろう。だが少なくともおそらく、あの町でこの連続行方不明が続くことはもうない。やがて吸血鬼が住む城の噂もゆっくりと廃れていくことだろう。
■ED4 古城と眠る
「さあ、ウェンディ、あなたも助けたい大切な人がいるでしょう?」
【パトリスが機械を操作した場合】はそのまま下記の文章を読み上げ。【ウェンディが機械を操作してから中に入ってしまった場合】はウェンディが「自らボタンを操作してから容器の中へ足を踏み入れてしまう」という一文を追加。
地下室の中央に聳える円筒状の機械の下、パラボラにも似た金属板の下、金属のおけのようなものの内部に立つ少女はゆっくりと頭上を見上げる。その次の瞬間のことだった。起動された機械の内部に、天井から液体が降り注ぐ。それは少女の身体を全身ぐっしょりと濡らすと同時に、その皮膚を、髪を、指先を緩やかに溶かしていく。感情を失ったようなうつろな瞳をした少女にも、痛覚はしっかりと残っていたのだろう。液体が降り注ぎ始めたその瞬間、少女は機械内部で耳を塞ぎたくなるような悲鳴を上げる。悲鳴を上げ開いたその口内にも液体は流れ込み、彼女の口からはごぼごぼと液体の泡立つ音と血液があふれ出す。
【SANチェック 1/1D6】
悲鳴を上げのたうつ少女。不意に、すぐ隣の容器に納められていた肉塊がその体表に浮かび上がらせた眼球を少女へを向ける。そして、先ほどまでただ蠢くだけだったそれは、少女に手を伸ばすように少女の納められた容器の隣から強い力でガラスの壁を叩く。ばん、ばん、ばん、と今にもヒビの入りそうな力で、何度も何度もその触肢は肉塊を収めたガラス容器に叩きつけられる。 激痛に悶える少女の身体が容器の壁に当たるたび、そこには血液の痕がつき液体の散る音がする。凄惨なその光景を前に、パトリスは目的の達成を確信し大きく笑い声を上げる。少女の悲鳴と女の狂気的な笑い声、暴れる少女とガラスを叩き続ける肉塊。それらの音が交じり合い、地下室に響く。
やがて肉塊の収められたガラスにぴしりとヒビが入る。それとほとんど同時の出来事だった。強い衝撃に刺激されたのか、古びた室内の壁面に大きくヒビが入る。このままでは地下室は倒壊してしまうだろうと、あなた達がそう想像するのは容易なことだっただろう。天井から散る砂埃、壁から剥がれ落ち床に散る破片。しかしパトリスは最早正気とは思えぬ様子で、ただただその場で笑い声を上げ続けるだけだった。
(探索や行動、RPがあればいったんここで自由にさせてよい。また、少女は明らかに助からない状態であるということを前提の上で探索者が脱出を拒否するようであればエンディング処理をKP判断で改変して構わない。脱出する場合は以下の文章となる)
この部屋にある出口らしいものは階段ひとつ。それがどこに続いているのかはわからないが、あなたたちはそこに向かわざるを得ないだろう。急がなければこの倒壊に巻き込まれることは明白だ。暗い階段に足を踏み出せばほどなくして階段と部屋の入り口は瓦礫によって隔たれて行く。あまりにもあっけなく、瓦礫はあっというまにあなたたちの退路を断ってしまった。轟音にまぎれる少女の悲鳴と女の笑い声は、瓦礫にふさがれた向こうで響き続けている。
そんな中、轟音にまぎれて何かの羽音が聞こえる。【目星】に成功した探索者はそれの音の主が翼の欠けた不恰好な蝙蝠であるのを目にするだろう。
それはあなたたちの頭上に羽音を響かせて階下へと通り過ぎていく。それを目で追えば、蝙蝠は瓦礫の小さな隙間から崩れ行く室内へと入り込んでいくのが見えた。しかしそれ以上それを気にする猶予はあなたたちにはない。階段の天井にも徐々にヒビは広がり、あなたたちは急いで階段を駆け上がる。長い階段を上りきれば、そこには壁があった。
出口が開けているわけでも扉があるでもない。しかし焦りの中目を凝らしてみれば、そこには城主の部屋から小部屋へと移動したときに触れたのとよく似た文様と手形が描かれているのが暗闇の中にかすかに見える。
誰か一人がそれに触れた時点で、視界は白く染まる。暗闇から突然明かりを目にしたあなたたちはくらむ視界の中でそこが城主の部屋であることに気付くだろう。どこか遠くから瓦礫の崩れるような音が響いていたが、一際大きな音が響き城を揺らしたのを最後にその音も聞こえなくなった。
その静けさの中、あなたたちは不本意に巻き込まれることとなったその冒涜的な事件が真相ごとどこかの暗闇に埋もれてしまったと感じることだろう。
しかしその脳裏に焼きついたあの少女の姿と悲鳴は、とうぶん頭から離れそうになかった。
■後日談(全エンド共通)
その日から十数年。
今のあなたたちには知る由もないことだが、世界は戦火に包まれる。
やがてその争いが収まり世界も落ち着いた頃、地図にクラウドホースの名はなかったという。
■クリア報酬
ED1 1D10
ED2 1D8
ED3 1D8
ED4 1D6
ここまでお読みいただきありがとうございました!
実際にプレイしてくださった方は、よろしければ是非アンケートにご協力ください。
シナリオページに掲載する難易度や目安時間などの参考にさせていただきます。