本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION
常田さん(https://twitter.com/tokitassk)にシナリオのトレーラーを製作していただきました。
本シナリオでセッションをする際には、この画像を通常のシナリオトレーラーの範囲でご使用頂けます。ご好意で製作していただいたものですので、画像の改変・二次配布などはご遠慮ください。
目が覚めると、見知らぬ部屋だった。
無機質なコンクリートの壁、床、天井。足首にずっしりと纏わりつく拘束。集められた顔見知りの犠牲者たち。
異質な空間に、ノイズ混じりのアナウンスが鳴り響く。
『これは生き残りを懸けた脱出ゲーム。』
舞台:現代日本
推奨人数:4人
シナリオ傾向:クローズド
想定時間:ボイスオンセで3~5時間前後
推奨技能:何をおいても生き残るという強い意志
準推奨技能:目星、戦闘技能
HO:KP向けの項目で後述します
本シナリオはPvP要素を含む特殊なシナリオです。
・R-18G表現
・PCの無惨なロスト
・PCの過去にまつわる特殊設定
などの要素を含みます。プレイする際は、必ず自己責任の上で、気心の知れたKP・PLでお楽しみいただくことをお勧めします。
――――――――これより下はKP向け情報となります――――――――
このシナリオは以下の要素を含みます。
特に2番目の項目については、シナリオの性質上PLに明かさないままセッションを行う事となります。本シナリオをプレイいただく際には、気心の知れたPLと、「使用するPCに重要な影響を与えうる可能性がある」という事を必ずよく相談した上でお願いいたします。
探索者たちは気が付くと見知らぬ部屋で目が覚める。突然の事に混乱する探索者たちに、謎の音声メッセージが「これはゲームだ」と語りかける。その説明によれば、探索者たちはこれより、命がけの脱出ゲームに参加しなければならない。目の前に広がる数々の仕掛けはいずれも解除に苦痛を伴うものばかりだ。探索者たちは知恵を絞り、時には犠牲を払って仕掛けを解除し、脱出を目指すこととなる。
しかしながら、この猟奇的な脱出ゲームの本質的な「プレイヤー」は探索者の内の一人、PC1のみである。PC1は自らの人生における大きな喪失を取り戻すために、ニャルラトホテプの化身、謎の黒い男との契約を行っている。それが他の探索者達を巻き込んだ猟奇的な脱出ゲームだった。
大まかな目的:各部屋の仕掛けを乗り越え、出口から脱出する。
●目覚めの部屋 枷を外し先へ進む
●第二の部屋 電流に耐えて先へ進む
●第三の部屋 手足を捧げて先へ進む
●第四の部屋 一人を犠牲に先へ進む
●最後の部屋 心臓を捧げて先へ進む
このシナリオには、ゲームの「プレイヤー」となるHO1が存在する。HO1は愛する人や家族を失うなど、人生の意味を失うに等しい喪失を経験した。打ちひしがれ、絶望したかもしれない。しかしどうしても諦めきれずにあらゆる方法を探し求めた末に、奇しくも、とうとうHO1はとあるアーティファクトに出会う。それはニャルラトホテプの化身の一つが封じられた「業苦の壺」だった。HO1は失ったものを取り戻すために、その忌まわしい品に願った。
このアーティファクトには邪悪な混沌の化身が宿っているが、幸いにも封じられているそれは人間の枠組みになぞらえてその願いをかなえる提案をした。
壺から生じた黒い男はHO1にゲームを持ちかける。それは複数人で臨む猟奇的な脱出ゲームであり、また同時に、苦痛を贄とした儀式であった。知り合い達と複数人で脱出を果たすために、様々な仕掛けに挑戦する。その過程では苦痛や肉体的な損失、果ては命を失う場合もある。そうして参加者たちが経験した苦痛を「業苦の壺」に収め、それを満たした上で脱出に成功する事がゲームの勝利条件だ。勝利すれば、ゲーム中に受けた肉体的損害は、死ですらも全て帳消しになるという。ただしこの条件はプレイヤーであるHO1のみが知っている。
HO1は自らの悲願のために、この条件を飲んだ。そのことを魔術で忘却させられたHO1と、その知人であるほかのHO2らは、ゲームの舞台となる密室で目を覚ますことになる。脱出成功の条件は「業苦の壺」を満たした上で脱出することである。たとえ脱出したとしても、壺が満たされていなければ、HO1の喪失が奪還できないことはもちろん、他の参加者が負った傷も現実のものとなってしまう。HO1は断片的にこのことを思い出すが、そのことを他の参加者に伝えることは禁止されている。
参加者同士の疑心暗鬼に苛まれながらも、「壺を満たして脱出する」ことが本シナリオの目的となる。
HO1:ゲームの「プレイヤー」
探索者は現実世界で非常に大きな喪失を経験し、それを取り戻すためにニャルラトホテプの化身との契約を行った。冒涜的な脱出ゲームの「プレイヤー」であり、道中で徐々に自身の身に起きたことを思い出すこととなる。
このHOには1人のみが該当する。
HO2:ゲームの「エネミー」
HO1と何らかの面識がある者(場合によっては無作為に選ばれた他人としても良い)。
HO1の事情は知らず、訳も分からないまま脱出ゲームに巻き込まれることとなる。敵対するわけではないが、ゲームの目的達成を阻む障害として利用される。
HO1以外のPC全員がHO2となる。
※いずれのHOの場合も、職業や経歴などの推奨はない。
また、HOの内容は秘匿情報となるため、PLには「特にHO指定はない」と伝えること。面識関係については、HO1の特別性が透けることを避けるため「全員知人同士である」としてしまうのが良いだろう。
ただし、HO1の「喪失経験」はPLに伏せられた状態で発生することを十分留意すること。
シナリオ本文の読み方
・地の文…KP向けの状況説明および処理に関する記述など、シナリオ本文のメイン部分です。適宜目を通しながら進行してください。
・読み上げ文…情景描写の文章、もしくは文章媒体での情報の内容です。この文章はそのままPLへ向けて読み上げ・提示を行って構いません。
・ダイスロール文…SANチェック及び各技能などの処理です。技能のダイスロールについては、”※強制”の記述がない場合振れる技能の提案の有無などはKPにお任せします。
<HO1のPCについて>
以降の本文にて、「プレイヤー」という表記があった場合はHO1のPCを指す。
プレイヤーには専用の情報開示などの処理が発生することがある。「プレイヤーが~~した場合、」などと記述されている場合、該当箇所の情報はHO1のPLにのみ秘匿情報として伝えること。
本シナリオの核となるオリジナルのアーティファクト。各部屋にて、モニター越しに壺の様子が映し出される。
ニャルラトホテプの化身が封じられた壺。接触した者を甘言で誘惑し、自身の力となる「苦痛」を取り込もうとする。
プレイヤーをはじめとするPCらのいる空間にも壺そのものが現れ、PCらの苦痛を吸収し、内部に蓄積してゆく。具体的には、喪失したSAN値、HPの数値に応じて、中に赤黒い液体が満たされてゆく。
本シナリオでは、最終的な脱出までにこの壺を満たす、つまり「一定以上の苦痛の犠牲を支払う」ことがGOODENDへの条件となる。
壺の中身は40ポイントで完全に満たされた状態となる。道中、モニター越しにPCが壺の状態を確認できるタイミングが度々存在する。その際には、その時点でのポイント数に応じて壺の内容量を描写すること。
①血肉の苦痛
PCがHPを損失するごとに、損失したHP数値分のポイントが蓄積される。
②精神の苦痛
PCがSAN値を喪失するごとに、損失したSAN値分のポイントが蓄積される。
KPはゲーム中、上記の数値をカウントして随時壺の状態に反映させること。また、40という数値は目安であり、PCの積極性や、開始時SAN値によってポイントの蓄積具合は変動する。クライマックスに良い演出を添えるために、事前に、あるいは場合によってはセッションの最中にでも、壺の容量は増減させてしまっても構わない。処理としての正確性を優先するか、物語の演出を優先するかは、KPの主義や卓の雰囲気に合わせて判断して良い。
最後の部屋の前に、ポイントが不足しているぐらいが最もプレイヤーの焦りや葛藤を煽り、緊迫感のある展開に繋がるだろう。
僅かな気だるさを抱きながら瞼を持ち上げる。いつの間に眠ってしまったのだろう。そう考えるよりも先に、固い感触に違和感が過った。
体を起こしてみれば、体の下にあるのは清潔なシーツでも柔らかなソファでもなく、床だった。貴方たちは皆一様に、覚えのない部屋で目を覚ます。
壁も床も天井もコンクリートがむき出しの、無機質な部屋。冷たい床から体を起こすと、じゃらりと音がする。音の方を見れば、左の足首に、無骨な足枷が取り付けられていた。足枷には鍵穴がついているが、鍵は見当たらない。
自分のほかにも何人かの人間が、同じように困惑した様子で周囲を見回していた。
状況描写を終えたら、すぐに見て分かる情報について調べることができる。【目星】などは不要。
◆枷を調べる
枷の先は床の端から伸びる鎖に繋がっており、鎖の長さのために部屋の手前半分までしか移動できそうにない。
枷自体はしっかりとした金属製で、力づくで外すことは難しい。
それぞれ色が異なる(赤、青、黄色、緑、以下人数に合わせて追加)。
◆部屋の内装
部屋の奥には金属製の重たそうな扉があり、その上に壁に埋め込まれる形でモニターが設置されている。また、部屋の中央辺りには大きなガラスケースのようなものがある。
上記が確認できた所で下記描写。
不意に壁のモニターの電源がオンになる。そしてひどく音割れした電子音声が流れだすと共に、それと同じ内容が真っ黒なモニターに白い文字で表示された。
『これは生き残りを懸けた脱出ゲーム。君たちはその知恵と勇気を振り絞り、先へ進むのだ。
ゴールへと辿り着くには多大なる犠牲が必要だろう。しかし躊躇してはならない。
それこそが重要だ…。』
安っぽいスリラー映画のようなメッセージが流れ終わると、モニターの映像は何か別のものに切り替わる。それきり部屋には再び、貴方たちの困惑する息遣いだけが満ちた。
メッセージが終わった後のモニターの映像は不明瞭で、枷を外して近くに移動しない限り、何が映っているのかよく分からない。
◆ガラスケース
近づいてみれば、それは大型の水槽のようだった。深さ1mあろうかというほどの大きなケースは液体で満たされており、その重さの為か、それとも床に固定されているのか動かすことはできそうにない。近づいてみれば、底面に何か、きらりと光るものがある。目を凝らしてみれば【人数分】個、等間隔に鍵が沈んでいるのが見えた。鍵はそれぞれ異なる色をしており、足枷の色と対応している。
また、ケースの側面には以下の様な文字が書かれている。
『自由になりたければ鍵を取れ』
【目星】鍵は底面に金具ではめられており、取り出すには留め具を指で外す必要がある
【聞き耳】液体からはつんと鼻をつく痛いまでの刺激臭がする。
【薬学】これは強い酸性の液体だと分かる
ケースから鍵を取り出すには、強酸の中に腕を突っ込む必要がある。鍵一つごとに【DEX×5】を振り、成功すれば1、失敗すれば1D2のダメージを受ける。
指先を浸した瞬間、じゅう、という音と共に煙が立つ。そのまま液体に沈んだ手に、ぬるりという感触の後、すぐさま鋭い痛みが襲った。
火で熱せられた様な、焼け付く様な熱。強酸によって、皮膚が、肉が、溶かされている。突き刺す痛みと同時に、目の前の液体が赤く染まった。痺れと熱と痛みとで、腕全体の組織が少しずつ溶け落ちてゆくのが分かる。
激しい苦痛に耐えながら、貴方はどうにか指先を沈め、鍵に触れた。
鍵を使えば足枷を外すことができ、先に進めるようになる。
プレイヤーが枷を外すと、枷の中から一枚の黒いカードが落ちる。
◆黒いカード
白い文字で以下の様に書かれている。
『気取られるな』
プレイヤーはそれを見た瞬間、誰かの語り掛ける言葉が頭の中にフラッシュバックする。
プレイヤーは君一人だ。他の参加者は味方であり、仲間であり、障害であり、敵だ。
ゲームのプレイヤーは君だ。君は君自身で成し遂げなければならない。
君しか知らないゲームのルールを、他の参加者に伝えることは禁止。
不確定の情報として匂わせるのも、一切禁止だ。
ルールを破ったら、即ゲームオーバー。
文字通り、ゲームのルールに関する秘匿情報を他の探索者に直接伝えることは禁止行為となる。KPはHO1のPLにこのことを強調し、もしもそのような行為を行うとしていれば事前に制止すること。制止を振り切って直接的な情報を口にするなどした場合は、ゲームオーバー処理を参照。⇒ 9.ゲームオーバー
◆モニター
近付けば映像をよく見ることができる。監視カメラのような、不鮮明な薄暗い映像で、テーブルの上に透明な壺のようなものが置かれている様子が映っている。壺の内側には赤黒い液体が伝って、底面に流れ落ちている。
(以降、モニターには「業苦の壺」が映し出されている。状況に応じて壺の状態は変化する。)
【目星】モニターの脇の壁に凹みがあり、小瓶が収められている
・小瓶
「中和剤」と書いてある。
ケースに入れた場合、酸性を中和してダメージをなくすことができる。【薬学】【アイデア/2】などの技能でそのことが分かっても良いだろう。
◆扉
分厚い金属の扉。中央に以下のような文字が刻まれている。
『白い文字は管理人の言葉。そこに偽りはない。
黒い文字は傍観者の言葉。嘘か真かは彼ら次第。』
扉には特に鍵などは掛かっておらず先へ進むことができる。次項へ。
先程の部屋と同様のコンクリートの部屋。やはり正面には扉とモニターがある。
また、中央には大きな椅子がある。
◆扉
金属の重たい扉。電子ロックがかかっているようで、0から9の数字を打ち込むパネルと、4文字分のモニターがある。
また、中央には以下のような文字が刻まれている。
『パスワードは暗闇の中に』
(KP向け)
万が一PLから「10000通りを順番に試す」という宣言があった場合、膨大な時間がかかるものとして基本的には却下して良いだろう。どうしても試す場合は許可して開錠しても構わないが、その場合は代償なしに扉が開くため不利な進行となる。
◆椅子
背もたれから足乗せまである、大きな椅子。足を乗せる台、太腿が乗る座面部分、肘置き、背もたれの首にあたる辺りにそれぞれ革製のベルトがついており、座った者を拘束できるようになっている。
また、背面にレバーがついており、そのレバーには文字の書かれたプレートが掛かっている。
『電源装置。通電のための素材はしっかりと固定すること』
【目星】椅子には無数のコードが繋がっており、配線は床下に潜っているようだ。
【機械修理】椅子には細工が施されており、座った者に電流が流せるようになっている。
誰かが座った状態でレバーを引くと、引いている間、椅子に電流が流れ続ける。代わりに、部屋全体の照明が落ちる。この間、壁の端々に書かれた四つの数字が光り浮かび上がる。レバーを下した際の描写は以下。
がちゃり。重たい音と共にレバーが下ろされる。
それと同時に、突き抜ける様な鋭い痛みが全身を襲った。頭の先から足の指まで、隅々を駆け巡る高圧電流が貴方の身体を内側から容赦なく焼いてゆく。その熱と痛みに耐えかねて、あるいは筋肉の強制的な反応で、貴方は拘束された四肢を、頭を、ばたんばたんと大きく震わせた。
周囲に居る者は、まるで生き物の身体とは思えない程激しい痙攣と、うっすら鼻をつく肉の焼けた臭いに、人が生きたまま電気回路となっているのを理解するだろう。
目にした者は【SANチェック】0/1
椅子に座っている者は1D4のダメージを受ける。拘束がしっかりとなされていない場合、電流が通った瞬間激しく痙攣し床から転げ落ちる。ダメージは固定で1となるが、すぐに照明も戻ってしまうため、やり直す必要がある。
通電中、【目星】に成功すれば壁の数字4つを確認することができる(数字はKPが任意に決定して良い)。失敗した場合でも電流を流し続け何度でもロールをやり直せるが、一度試みるごとに1D4のダメージとなる。
判明した数字を扉に打ち込めば、扉が開く。
◆黒いカード
プレイヤーが椅子の裏を見ると、椅子の下に一枚のカードが挟まっているのを見つける。
白い文字で以下の様に書かれている。
『これは儀式だ』
プレイヤーはそれを見た瞬間、誰かの語り掛ける言葉が頭の中にフラッシュバックする。
苦痛を贄とした儀式。君たちの業苦で壺を満たせ。
これはとても明快で分かりやすいゲームだが、同時に根源たる苦痛、絶望、恐怖、あらゆる悪を糧とする儀式だ。儀式の成功には、それらが塗り重ねられる程良い。よく覚えておいてほしい、重要なことだ。
成功すれば、君たちが対価として支払ったその汚泥を糧として、君の願いは叶う。あらゆる不条理は取り消される。支払った代償すらも取り戻し、君たちは元通りの日常に帰ることができる。
成し遂げるには、躊躇するな。やり遂げろ。
◆壁
【目星】スペシャル以下
うっすらと透明な塗料で、壁に何か書いてある事に気付く。時間をかけて丹念に探すのであれば、4つの数字を見つけ出す事ができる。
【聞き耳】【薬学】が自主的に宣言されて成功した場合
においから、壁に塗られた塗料に気付く。ほとんど透明なそれは、数字を描いている。
数字を入力すれば扉が開く。次項へ。
またもコンクリートの部屋。正面にはモニターと金属の扉、部屋の手前側の床に四角い切れ込みがある。部屋の側面には大きな棚が佇んでいた。
◆床の切れ込み
1m四方程度の大きさ。よく見ると端にモニターがあり、以下のように表示されている。
『0/7.00kg』
また、切れ込みの脇にはこのような文字が刻まれている。
『扉を開くスイッチを押せ』
力を掛けた場合、床がゆっくりと沈み込む。7kg以上の負荷を掛けた場合、扉の方からガチリという重たい音が響く。
重さが掛けられている間だけ扉は開く。ただし、扉が開いている最中でも、重しが取り除かれた瞬間、扉は勢いよく閉じられる。
◆棚
両開きの閉じた棚。取っ手には白い文字が書かれた黒いプレートが掛けられている。
『君たちを助ける道具』
棚を開くと、そこには様々な道具が整然と並んでいる。
包丁、ノコギリ、チェーンソウ、手斧等、思い当たる範囲の大小様々な刃物。包帯、駆血帯、ガーゼ、タオル…、怪我の処置に使えそうなもの。新品同然に輝くそれらが何のための道具なのかは、想像に難くない。
【SANチェック】1/1D2
【医学】【アイデア/2】人の足一本または腕二本程度の重さだと分かる
プレイヤーは棚または床の切れ込みから、一枚の紙を見つける。
◆契約書
それは真っ白い紙だ。上部に印字された無機質な文字で「契約書」と記されているがその下はすっかり白紙だった。紙の一番下に手書きで、自分の名前が書かれている。
【アイデア】自分の筆跡だと分かる
これを見た瞬間、脳裏に記憶がよぎる。
※下記はHO1の喪失を「大事な人間の死」とした場合の描写。KPはHO1のPCに合わせた事象を設定し、それに合わせて描写を変更すること。
大事な相手の無残な死体。信じがたいその光景を前に立ち尽くしていた。受け入れがたかった。しかし何度嘆いても、叫んでも、目を逸らしても、それは現実だった。
当たり前の日常を唐突に失った貴方は、どうしてもそれを受け入れられなかった。諦めきれずあらゆる手段を探し続けた。その末に―――
黒ずくめの男が、自分を見つめて笑っていた。
『この現実のやり直しを望むんだね?』
どうしてそんなことになったのか、記憶は定かではない。しかしただ一つ確かなのは、そのとき、その問いかけに、はっきりと頷いたということだ。
『なら、契約成立だ。おめでとう、君は悪魔と契約するんだ』
『では分かりやすく、ゲームをしよう。そしてそのゲームは君の願いを叶えるための儀式でもある』
『やり遂げるんだ、何があっても』
腕や足を切り落とす場合、2D4のダメージ。切断を実行した加害者・被害者は【SANチェック】1D2/1D6。目撃者は【SANチェック】1/1D3。駆血帯等でしっかりと処置をする宣言があった場合、ダメージを軽減しても良い。
刃物が皮膚を裂き、更にその下の肉に食い込む感触。鋭い刃先は思いの外簡単にその柔らかな組織へ傷をつけた。ぷつりと切れた線から血が溢れ出し、それは瞬く間に皮膚を伝って流れ落ちる。
想像を絶する痛みと共に、身体の一端の肉が切断され、刃が沈んでゆく。あまりの激痛に、思わず意味をなさない悲鳴が口から溢れる。視界が揺らぎ、しかし再びその痛烈な刺激によって強制的に意識が呼び覚まされ、倒れることすら許されなかった。
やがて、ごり、と固い感触に行きあたる。
骨だ。
無慈悲な凶器は、そのまま躊躇なく固い骨にすら食い込む。
ごり、がり、という感じた事のない衝撃と嫌な音、痛みが襲う。
そうして、永遠にも感じられた苦痛の果てに。
ごとり。
貴方の四肢は、身体との接続を失って血の海となった床へと落ちた。
十分な重しが載った状態であれば、扉を開けて先へ進むことができる。
◆扉が開いたら
プレイヤー以外のPCそれぞれに秘匿で下記。
足元に一枚のカードが落ちているのを見つける。黒いカードに白い文字で以下の様に書かれている。
『裏切り者が居る』
それを見た瞬間、誰かの語り掛ける言葉が頭の中に響く。
ここにあるのは「業苦の壺」。君たちの苦痛を贄として満ちる。
慎重に見定めろ。壺を満たさんとする者が居る。
(KP向け)
「裏切り者が居る」のは事実だが、それはプレイヤー視点でのHO2たちである。このカードの内容についてHO2のPCが語る事への制限はないため、HO1に見せたりしても構わない。ただしHO1が否定のために自身の知る事実を語ることは通常通りルールで制限される。
死亡者からの変更が行われなかった場合の第四の部屋。⇒7.墓下 参照
また同様の四角い部屋、奥には扉とモニターが見える。
部屋の四隅には、円筒形のシェルターの様な装置が設置されている。それぞれ、人ひとりが入れそうな程度の大きさだ。また、天井には無数の小さな穴が開いていた。
全員が部屋に入ると、モニターから音声と、白い文字のメッセージが流れ出す。
『これからこの部屋には死の雨が降り注ぐ。猶予は20秒。生き残る方法は、死を遠ざけるそのシェルターだけだ。時間が過ぎれば、シェルターはロックされてしまう。さあ、急ぐがいい』
メッセージ終了後、モニターには20という数字が大きく表示され、カウントダウンが開始される。
この時点で、それぞれの探索者にクローズで次の行動を確認する。全員の宣言が出そろった所で時間を進める。具体的には、俯瞰図で例えて左上、右上、左下、右下の4か所のシェルターがある事を明示すること。部屋の奥にある扉は鍵がかかっているのかびくともしない。リアルタイムで判断を迫る必要はないが、1分間など宣言までの時間制限を設けても良いだろう。
シェルターは合計数が【人数-1】になるよう、開かないものがあり、1人があぶれる様に調整する。どの位置が使用不能かはKPが決めて良い。最終的に、シェルターに入れなかったものは死亡する。
シェルターに入ると宣言し、他の探索者と場所が被らなかった者は、ただちにシェルターに入る事ができる。
宣言が被った場合は、譲り合う事がない場合、STR対抗などで処理を行う。
あぶれる者が確定した所で、シェルターに入っている探索者には以下の情報を提示する。
貴方が身を収めたシェルターの、開いた扉の内側に白い文字が書いてある。
『全員が同時にボタンを押せば、追加のシェルターが開く』
文字の下には赤いボタンがある。
この情報を全員が確認した上で、カウントが0になるまでの行動を自由に宣言させる。記載の通り、もし全員がボタンを押すのなら、最後のシェルターも開き全員が中に逃げることができる。
行動が確定し処理が済んだら、カウントが0になったとして描写を進行する。
以下はあぶれる者がいた場合の描写。全員がシェルターに入ることに成功した場合、適宜改変すること。
カウントが0になると同時に、ビーッというけたたましい警告音が鳴り響く。同時に、全てのシェルターの扉が自動的に閉まり、ガチャリとロック音が響いた。
そして程なくして、天井の穴から一斉に、シャワーの様に水が降り注ぐ。それは部屋全体にまんべんなく降りかかり、シェルターの外に居る者の身体を濡らしてゆく。
ひやりとした感触が頬に触れ、そしてすぐにそれは熱へと変わる。降り注ぐそれが文字通り死を呼ぶ、肉を溶かす液体であることを、シェルターの中の者もガラス窓越しに理解するだろう。
濡れた顔がじわりと赤く染まり、崩れてゆく。皮膚が溶け、その下から赤い血と、同じように赤い皮下組織が露わになった。強い薬液に溶かされた顔が、手が、腕がどろりと溶けてゆく。それは一瞬遅れて激しい痛みを訴え出した。思わず顔へ手をやれば、指先にも、触れた頬にも焼けつく感触が走り、ずるりと指先に溶けた皮膚の残骸がこびりついた。液体を拭おうとすればするほど、肉ごと崩れてゆく。天井からは容赦なく死の雨が降り注ぎ続け、服の布地越しに染み込んだ薬液が全身に浸食し始めていた。
<該当PCのRPがあれば適宜描写>
べたり。
シェルターのガラス張りの面に、助けを求めた手が触れる。叩きつけられた衝撃で手指の肉が崩れ、血と肉の混じった半液状のものがどろりとガラスを伝い落ちる。
必死に何かを訴える顔面には、苦痛と、肉の間に垣間見える歯や骨が垣間見えていた。
やがて、雨が止み、シェルターの扉が開く。
降り注いだ液体は、床の隅の排水溝から排出されたようだ。
血と酸が交じり合って流れてゆく床の中央に、最早原型を留めず崩れた遺体が無造作に転がっている。
【SANチェック】1D2/1D6
シェルターが開くと同時に、部屋の奥の扉からがちゃりと音がする。扉のロックが解除され、先へ進むことができるようになる。また、シェルターの扉が開いた際、プレイヤーは扉の裏から一枚の黒いカードが落ちるのを見つける。
『脱出を許すな』
プレイヤーはそれを見た瞬間、誰かの語り掛ける言葉が頭の中にフラッシュバックする。
創意工夫をすればあるいは壺を満たさずして出られるかもしれない。脱出成功すればもちろん出られるが、それは儀式の失敗。単なる脱出だ。払った犠牲は戻らない。全てをリセットしたいのならば、無知な鼠がただ逃げるのを阻止せねばならない。
一方、プレイヤー以外のPCも同様に扉の裏からカードを発見する。それぞれに秘匿で下記。
扉の裏から黒いカードが落ちる。足白い文字で以下の様に書かれている。
『儀式の完遂は近い』
それを見た瞬間、誰かの語り掛ける言葉が頭の中に響く。
壺が満ちれば儀式は完遂する。終わりが迫っている。全てを止めるには、壺を破壊するしかない。
次の部屋が最初で最後のチャンスだ。
(KP向け)
「裏切り者が居る」のは事実だが、それはプレイヤー視点でのHO2たちである。このカードの内容についてHO2のPCが語る事への制限はないため、HO1に見せたりしても構わない。ただしHO1が否定のために自身の知る事実を語ることは通常通りルールで制限される。
黒い男は自身をアーティファクトの封印から解き放つため、あくまでゲームのルールに縛られながらもHO2を利用して壺を破壊させようとする。
死亡者からの変更が行われた場合の第四の部屋。
「業火に焼かれる死」が選択された場合のみ此方の部屋となる。⇒7.墓下 参照
また同様の部屋、奥には扉とモニターが見える。
部屋の中央には鈍い光を放つ、金属のオブジェが置かれている。
◆牡牛のオブジェ
実寸大より一回り程大きな牛のオブジェ。立派な角が天に向かって伸びている。
オブジェの腹の下あたりには何か円形の装置が床に設置されている。
【機械修理など】円形の部分が巨大なバーナーであると分かる
【歴史】そのオブジェが「ファラリスの雄牛」と呼ばれる処刑道具であると分かる
⇒犠牲者を真鍮製の牡牛像に入れて、下から火で炙る処刑道具。
生きたまま焼かれる犠牲者の悲鳴が牡牛の雄たけびの様に聴こえると言われている。
【目星】オブジェの背中には扉が取り付けられている
◆扉
中央に文字が刻まれている。
『業火に捧げる贄を選べ』
この部屋では、必ず一人を像に入れなければ先に進むことはできない。それまでの間、奥の扉はロックが掛かっており開けることができない。オブジェに一人を入れると、扉が閉まり自動的にバーナーが着火される。
ごうごうと音を立てて、大きな火の手が床から上がり、牛の腹を炙り始めた。熱せられた金属が、鈍い色から白んだ黄金色へと変わる。
それと同時に、熱を持った金属は、中に身を収めた者の体を容赦なく焼き始めるだろう。熱せられた壁面に触れていた手が、足が、高温と熱気に襲われる。しかし雄牛の体内は狭く、熱から逃れる術はない。やがて狭い空間全体が高温に包まれ、直接壁面に触れない皮膚までもが水泡をはらみ、焼け焦げ、酷い熱傷で崩れてゆく。空間すらもすっかり熱せられて、呼吸をする度に焼けついた空気が気管を焦がしてゆく。喉の奥までもかきむしりたくなるような痛みに満たされて、酸素がまともに取り込めない。全身を外からも内からも焼かれ、呼吸すら奪われ朦朧とする意識の中、像の天井から伸びる細い管が視界に映った。殆ど本能的にそれに這い寄り、管の先に口を寄せる。その管は唯一、像の外へと繋がっており、必死に吸い込めば僅かながら酸素が流れ込んでくる。どうにか息をして命を長らえようとするその呼気と呻きは、曲がりくねった管を通る内に歪み、やがて地を這うような牡牛の雄たけびとなって像の口から溢れ出した。
外からはその惨状は見えない。しかし、肉が焼ける嫌な臭いと、雄牛の口から発せられる低く歪んだうめき声、必死に扉を叩いているであろう鈍い音が、何が起きているのかをありありと伝えていた。
やがて、雄牛の全身が黄金色に染まる頃には、中からは何の音も聞こえなくなっていた。
中の人間が絶命すると同時に、部屋の奥の扉からがちゃりと音がし、ロックが解除され先へ進むことができるようになる。また、雄牛の扉が開いた際、プレイヤーは扉の裏から一枚の黒いカードが落ちるのを見つける。
『脱出を許すな』
プレイヤーはそれを見た瞬間、誰かの語り掛ける言葉が頭の中にフラッシュバックする。
創意工夫をすればあるいは壺を満たさずして出られるかもしれない。脱出成功すればもちろん出られるが、それは儀式の失敗。単なる脱出だ。払った犠牲は戻らない。全てをリセットしたいのならば、無知な鼠がただ逃げるのを阻止せねばならない。
一方、プレイヤー以外のPCも同様にカードを発見する。それぞれに秘匿で下記。
扉の裏から黒いカードが落ちる。足白い文字で以下の様に書かれている。
『儀式の完遂は近い』
それを見た瞬間、誰かの語り掛ける言葉が頭の中に響く。
壺が満ちれば儀式は完遂する。終わりが迫っている。全てを止めるには、壺を破壊するしかない。
次の部屋が最初で最後のチャンスだ。
(KP向け)
「裏切り者が居る」のは事実だが、それはプレイヤー視点でのHO2たちである。このカードの内容についてHO2のPCが語る事への制限はないため、HO1に見せたりしても構わない。ただしHO1が否定のために自身の知る事実を語ることは通常通りルールで制限される。
黒い男は自身をアーティファクトの封印から解き放つため、あくまでゲームのルールに縛られながらもHO2を利用して壺を破壊させようとする。
この部屋には、これまでにあったモニターがどこにもなかった。部屋の最奥には一つだけ扉がある。しかしそれもこれまでのものとは違い、扉には遠目にも分かる大きな文字で「EXIT」と書かれていた。
部屋の中央には1mほどの台があり、その上に透明な壺が置かれていた。また部屋の四隅にはそれぞれ拳銃、手斧、包丁、金属製のハンマーが置いてある。
◆台と壺
透明な壺は、これまでモニターに映っていたものだ。画面越しに見ていたものと同じように赤黒い液体が溜まっている。その前には白い文字の書かれた黒いカードが置かれている。また、台には引き出しがついている。カードには下記のように書かれていた。
『心の臓を捧げよ』
◆引き出しの中
メス、ナイフなど、様々な種類の刃物が整然と並んでいる。
この部屋では、誰かの「心臓」を摘出し、壺に入れることが扉を開く条件となる。それまでは扉はロックされている。
心臓を壺に入れると、がちりと重たい音が扉から響く。扉は開ける状態になり、外に出て行く事ができる。殺害を実行した加害者は【SANチェック】1D3/1D6。目撃者は【SANチェック】1D2/1D4。
心臓を捧げずに脱出できる方法を用意しても良いが、生還難易度が上がる為推奨しない。
この時点で、「ここで負った傷は脱出後に解消されること」「犠牲を払って脱出する必要があること」を確信しているのはプレイヤーのみである。加えて、HO2はひとつ前の部屋で「壺を破壊すること」を示唆されている。誰かを明確に犠牲にすることが求められるギミックに対して断行しようとするプレイヤーと壺を破壊しようとするHO2間での衝突、葛藤といったRPがクライマックスの見所となるだろう。各PL/PCが納得のいく結論を出すまで、存分に悩ませること。
扉を開き外に出た場合、エンディング処理となる。⇒8.エンディング へ
ここでは、道中で死亡した探索者の扱いについて記載する。死亡者が出た場合、裏で秘匿情報として、死亡者にのみ以下の進行を行う。複数人の死者が出た場合、二人目以降も同じ空間に送られた扱いとなる。
「お疲れ様。君はゲームから脱落したのだね」
軽やかな男の声で目が覚める。起き上がった貴方の目の前に、見覚えのない黒ずくめの男が立っている。貴方は立ち上がって彼を見る。そう、難なく立ち上がる。見下ろしてみれば、身体には傷ひとつなく、痛みもない。
「混乱しているね。解説してあげよう」
男が指を鳴らすと、目の前の壁、いや、そこに埋め込まれているモニターが光を放つ。
<※プレイヤーが契約を行った際の状況を描写>
モニターの映像の中で、見覚えのある男(女)が、口を開いた。
『契約する』
「そう、これは<プレイヤー>が悪魔と契約しプレイヤーとして挑戦したゲーム、そして不幸で不条理な現実を打ち砕く儀式なんだ」
ぱちり。男が指を鳴らすと映像が切り替わる。そこには先程まで貴方がモニター越しに目にして居たのと同じ、壺が映し出される。
「これは業苦の壺。ここには人間のあらゆる業苦が蓄積される。君たちの苦痛、絶望、恐怖、憎悪、狂気が」
「この壺を満たすこと。それが儀式の成功条件だ。そうすれば、僕はそれを贄とし、君たち、そして<プレイヤー>である彼(彼女)に生じたあらゆる不条理を取り払ってあげる」
「……もう分かるかな? 君は、<プレイヤー>の凶行を応援しなきゃならなかった。君たちが助け合い手を取り合い抜け道を探して奮闘する程、君たちの救いは遠退くわけだからね」
「君は、<プレイヤー>の<味方/敵>として、大いにゲームに役立ってくれたみたいだね」
「さて、とはいえ、ここで退場と言うのも、ただただ観戦と言うのもつまらないだろう。君には、ここからゲームに干渉する権利をあげよう」
「さあ、どうする?」
★ゲームへの介入
以降、死亡した探索者はモニター越しに他のメンバーの動向を観察できる。PLにはセッションの様子を観戦してもらいつつ、各PCが秘匿で処理しているカードの発見、それに伴うフラッシュバックのメッセージも共有するのが良いだろう。
また、これを受けてプレイヤーを手助けすべく、今後の部屋に対して任意の操作を部屋ごとに一つだけ行うことができる。次の部屋へ進む前に、行う操作を確認すること。死亡者が複数居る場合、全員で相談して操作を決定する。
①ギミック選択(第四の部屋限定)
貴方は第四の部屋の内容を選ぶことができます。
⇒酸の雨によって溶かされる死
⇒業火によって焼き殺される死
②ギミック追加(第五の部屋限定)
第五の部屋では、彼らは「一人の心臓を捧げる」ことを強いられます。貴方はそれに対して、使える武器を追加・没収できます。
⇒好きな武器を選んで追加
⇒拳銃、手斧、包丁、金属製のハンマーからいずれかを没収
③制限を追加
次の部屋に対して、貴方は以下のどちらかを施行できます。
⇒制限時間を設ける
⇒一人を選んで拘束する(拘束内容は任意、入室した瞬間拘束される)
④メッセージカードを送付
貴方は自由なメッセージをカードに書いて送ることができます。メッセージは20文字以内でなければいけません。
⇒白い紙に黒い文字で書かれたカードが、次の部屋に落とされる
⑤薬の送付
貴方は次のいずれかを次の部屋に置くことができます。望むのであれば、薬の内容をラベルに添えることができます。
⇒回復薬(1D4回復)
⇒劇薬(POT20との対抗、失敗で1D20ダメージ)
全員が「死亡」または「最後の部屋の扉を出る」、あるいは「壺を破壊する」のいずれかを行った時点でエンディングとなる。
◆GOOD END:壺を満たして外に出る
壺を満たすことができた場合、ゲーム中での生死にかかわらず全員が生還となる。
ゲーム中での負傷は死亡も含めて全て現実ではなかった事になる。ただし経験した記憶は消えない為、失ったSAN値はそのままとなる。
<共通>
扉を開けて通過したところで、貴方達の意識は不意に途切れる。
やがて、貴方達はそれぞれ、自室のベッドで目を覚ますだろう。そう、生きて扉をくぐることのできなかった者ですらも、だ。
飛び起きて、じっとりと嫌な汗に包まれながら自分の体を確認する。そこには傷一つない、健常な肉体があった。窓からは眩い朝日が差し込んでいる。穏やかな朝だ。
あの密室の中で死を迎えた者ですら、起き上がった自分がいつも通りに使い慣れたベッドに横たわっていたことに気づくだろう。
しかしながら、貴方の脳裏には、あの凄惨な部屋での出来事が、しっかりと刻み込まれていた。果たしてあれは本当に、ただの夢だったのか?
ぐっしょりと手汗に湿った手のひらが、その答えを物語っていた。
<プレイヤー>
さて、目覚めた貴方はまず真っ先に確かめることがあるだろう。
ゲームの勝利報酬。悪魔との契約、その対価はきちんと支払われたのか。貴方はすぐにそれを確かめに走り、そしてすぐに知るだろう。貴方に降りかかった悲劇が、まるで嘘のように「なかったこと」になっていることに。契約は果たされた。貴方はあの血生臭い地獄の様な試練を乗り越えて、無事に自らの悲劇の運命を捻じ曲げることに成功したのだ。
SAN値報酬
現実へ帰還した:1D10
ゲーム世界で死を経験した:1D6
◆BAD END:壺を満たせなかった
壺を満たすことができなかった場合、ゲーム中での生死はそのまま現実にも反映される。
したがって、ゲーム中での負傷はそのままとなり、死亡した場合はロストとなる。
<生還者>
扉を開けて通過したところで、貴方達の意識は不意に途切れる。
やがて、貴方達はそれぞれ、自室のベッドで目を覚ますだろう。
飛び起きて、じっとりと嫌な汗に包まれながら周囲を確認する。見慣れた部屋の窓からは眩い朝日が差し込んでいた。穏やかな朝だ。体を起こしてみれば、自分がいつも通りに使い慣れたベッドに横たわっていたことに気づくだろう。
しかしながら、貴方の脳裏には、あの凄惨な部屋での出来事が、しっかりと刻み込まれていた。果たしてあれは本当に、ただの夢だったのか?
<死亡者などが居た場合>
混乱しながらテレビをつける。朝のニュース番組の淡々としたキャスターの声が、事件の報道を伝えていた。
「都内で一人暮らしの〇〇さんが、自室のベッドで死亡しているのが発見されました。警察は事件と事故の両面で捜査を続けており……」
<プレイヤー>
貴方はゲームに負けた。
目を覚ました瞬間、貴方はそのことを悟るだろう。周囲の人間を巻き込んでまで行った悪魔とのゲームに敗北した。そこまでして取り戻したいと願った対価は、得られなかったのだ。貴方の身に降りかかった悲劇は変わらなかった。それどころか、あの空間で支払ったあらゆる犠牲すら、もう二度と戻ることはないのだ。
そんな貴方をあざ笑うように、これまでと変わらない朝の光が部屋を満たしていた。
SAN値報酬
なし
◆BAD END:壺を破壊した
壺を破壊した場合、ニャルラトホテプの化身が解き放たれることとなる。
乾いた音を立てて壺が割れる。透明な無数の破片が床に散らばり、中に満たされていた赤黒い液体が辺りにまき散らされた。それは床へと広がり、そしてそのまま部屋の床全体を赤黒く染め上げてゆく。無機質な灰色だったコンクリートの床が染まり、そのまま目に痛い赤色が壁へと這い上がる。貴方たちを取り囲むように、その業苦の色は部屋全体を包み込んだ。
「残念、ゲームオーバーだ。そしてありがとう、"裏切り者"!」
降り注ぐ声。朗々としたそれは底抜けに明るく、それでいてどこか不気味な気配を纏っていた。
「君たちのお陰で、ようやくこの窮屈な壺から抜け出すことができるよ」
声が響く中、床に砕け散った透明な破片がぼろぼろと形を失い崩れてゆく。それだけではなかった。床も、壁も、この場所を構成する全てが脆く霧散してゆく。足をつく地も失った身体が、赤黒いどろりとした闇の中に落ちてゆく。
痛み、苦しみ、怒り、恨み、ため込まれたあらゆる業苦が全て、再び自身に襲い掛かって来る。
【幸運/2】
失敗→(壺に溜まったポイント/人数)のダメージ
成功→上記の半分のダメージ
このダメージでHPが0になったPCは死亡する。また、ここまでに死亡したPCもそのままとなる。
<生還者>
扉を開けて通過したところで、貴方達の意識は不意に途切れる。
やがて、貴方達はそれぞれ、自室のベッドで目を覚ますだろう。
飛び起きて、じっとりと嫌な汗に包まれながら周囲を確認する。見慣れた部屋の窓からは眩い朝日が差し込んでいた。穏やかな朝だ。体を起こしてみれば、自分がいつも通りに使い慣れたベッドに横たわっていたことに気づくだろう。
しかしながら、貴方の脳裏には、あの凄惨な部屋での出来事が、しっかりと刻み込まれていた。果たしてあれは本当に、ただの夢だったのか?
<死亡者などが居た場合>
混乱しながらテレビをつける。朝のニュース番組の淡々としたキャスターの声が、事件の報道を伝えていた。
「都内で一人暮らしの〇〇さんが、自室のベッドで死亡しているのが発見されました。警察は事件と事故の両面で捜査を続けており……」
<プレイヤー>
貴方はゲームに負けた。
目を覚ました瞬間、貴方はそのことを悟るだろう。周囲の人間を巻き込んでまで行った悪魔とのゲームに敗北した。そこまでして取り戻したいと願った対価は、得られなかったのだ。貴方の身に降りかかった悲劇は変わらなかった。それどころか、あの空間で支払ったあらゆる犠牲すら、もう二度と戻ることはないのだ。そしてあの悪魔は、解き放たれてしまったのだろう。貴方が願った対価は、悍ましい悪意の解放だった。
そんな貴方をあざ笑うように、これまでと変わらない朝の光が部屋を満たしていた。
SAN値報酬
なし
プレイヤーが他の参加者に「ゲームのルールを伝えた」場合、即座にゲームオーバーとなる。これは最初のカードと記憶のフラッシュバックの際に告知されるが、それでもプレイヤーが他のPCに情報伝達しようとした場合、KPはニャルラトホテプとして直接プレイヤーに語り掛ける、強制的に行動を制限するなどの方法でそれを制限することを推奨する。
ただし、それでも制止を振り切ってルールを違反した場合、以下の描写に沿って処理を行う。
何を言いかけたのか。その言葉が音になる代わりに、<プレイヤー>の喉から何かが裂ける様な嫌な破裂音がした。
次いで生暖かい飛沫が上がる。鮮やかな赤色が無機質な部屋の床を、壁を彩ってゆく。心臓が脈打つのと同じ定期的なリズムで、ぴゅう、ぴゅう、と鮮血が吹き上がり、その場に立ち尽くす探索者達の全身を赤く染めてゆく。
やがて、ふらつきながら倒れた<プレイヤー>の身体が床に一際大きな赤い水たまりを作ると、今度はじわりじわりと、その輪郭が形を失ってゆく。直前まで人間だったそれは、まるで熱したチョコレイトの様にどろりと崩れ、赤黒い血と肉の混合物になって床へと広がっていった。
目の前の惨状に言葉を失っていると、不意に天井から声が降ってくる。
「あーあ、残念。ゲームオーバーだ」
その言葉を最後に、貴方たちの意識は途切れた。
以降の処理はBAD ENDの場合を参照すること。<プレイヤー>は死亡扱いとなり、他の参加者たちは現実世界に戻るが、それまでに負った心身の傷はそのまま残る。あるいは、途中で攻略が中断されることが味気ないと感じるのであれば、<プレイヤー>不在のまま最後の部屋までのゲームを継続し、壺を満たせば残りの参加者たちはGOOD END扱いとしても良い。
本シナリオは身内のとあるPCに合わせて、専用に書いたシナリオの調整版となります。
元のPC、プレイヤーとなった探索者は大事な相手を不慮の事故で突然亡くし、その相手を取り戻すために悪魔(ニャルラトホテプ)との契約を行い、ゲームに臨むこととなりました。身近な人々を巻き込み、正しく儀式を成功させるためには情報を秘匿した状態で、最終局面には自分が疑われるような行動(周囲のPCを積極的に殺す)を取らなければならない……といった内容になっています。
複数人の参加者が密室に集められ、非道な脱出ゲームに挑戦することになる……お察しの方も多いかもしれませんが、某有名サイコスリラー映画に影響されている節があります。大好きです。
CoCとしてはかなり異色ですが、面識のあるPC同士の疑心暗鬼や、ただただグロ描写もりもりな苦痛を楽しみたい方にお勧めです。たまにはこんなシナリオもいかがでしょうか。
・ 2022/08/29 修正
「プレイヤー」以外のPCが相対的に薄くならないよう、「エネミー」としての役割を持たせ敵対を誘導する要素を追加しています。これによってPvP難易度が多少上がることが見込まれるため、KPは必要に応じて生還難易度を調整してください。
また、上記の一環として「ニャルラトホテプの化身」が壺から解放されるBADENDが追加されています。
その他細かな描写や誤りの修正など。
ここまでお読みいただきありがとうございました!
実際にプレイしてくださった方は、よろしければ是非アンケートにご協力ください。
シナリオページに掲載する難易度や目安時間などの参考にさせていただきます。